業界が身構えるのが、東南アジアや欧米など中・長距離路線の悪化だ。タイ国際航空は3月にバンコク―日本路線の減便を発表。シンガポール航空は日本などのアジア路線だけでなく、アメリカやヨーロッパの都市を発着する路線でも大規模な減便を決めている。
アメリカのユナイテッド航空やデルタ航空、ハワイアン航空も足元で相次ぎ日本路線の規模を縮小。フィンランドのフィンエアーは3月末から予定していた関空―ヘルシンキ路線の増便を見送った。ルフトハンザ ドイツ航空では予約の大幅な減少とキャンセルの頻発を受け、世界最大の旅客機であるA380を含め、グループの運航規模を今後数週間で最大50%削減する計画だ。
予約低迷でリストラの不安も
実際にANAでは3月に入り、アジア路線の予約数が前年比で5割減少、北米・欧州路線も同4割減少した。「2月に満席だったシンガポール路線は、3月中旬に定員約250人に対し、まだ予約が50人程度の便もある」(ANAの関係者)。
JALでも各方面の路線で需要が減少しており、「3月に入ったあたりから、中・長距離路線の予約が一気に減り、予約率が30~40%まで落ち込んでいる。近年見たことがないほど低い数字ばかりだ」(JALの関係者)という。
JALは3月のホノルルやバンコク路線を一時的に減便すると発表、別の航空大手の客室乗務員は「これまで欧米路線の1席100万円近いビジネスクラスはほぼ満席で本当に忙しかった。それが3月のフライトでは50席中30席が空席。単純計算で1便当たり3000万円が失われている。会社が潰れるんじゃないかってくらいお客さんが乗っていない」と悲壮感を漂わせる。
【2020年3月11日7時5分追記】初出時の一部表記に重複がありました。お詫びして修正いたします。
2020年3月はそもそも、月末に羽田の国際線を大幅に増便することで、ANAやJALにとって成長加速の出発点となるはずだった。アメリカ路線を中心に、ANAは14便、JALが12便を増便することが決まっているが、事態の収束が見込めなければ多くの路線で増便が延期されるか、空席だらけの便が増えることになる。
羽田の大増便に向け、ANA、JALともに機材と人員の増強を積極的に進めてきた。固定費が重くのしかかるため、「(予約の低迷が続くと、人員削減などの)リストラが起こらないか不安だ」(航空大手の地上職員)という声が上がる。
もはや羽田の増便どころではなく、従業員を守り切れるだけの経営体力があるのかが試されている。
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