ANA、コロナ禍でも国際線を増便する意外な理由 12月中旬に中国・深センへ新規路線が就航した
世界の各地域で、コロナ前の水準まで旅客需要が戻り切っていないが、実はANAは深センに限らず、少しずつ国際線の供給を回復させている。例えばアジアではフィリピンやタイの路線で、貨物需要の強い現地発の片道だけを運航し、日本発の往路を徐々に復便させるパターンが形成されつつある。
競合の日本航空(JAL)が現地のカンタス航空と提携して最大シェアを誇ってきたオーストラリアでは、特殊な片道需要を把握することで、早々に便数を戻してきた。ANAで路線戦略を担うネットワーク部の太田幸宏氏は「ヨーロッパとオーストラリアを結ぶ直行便が運休となり、日本を経由する便が世界最短になるなど、想定していなかった需要が生まれた」と驚きを隠さない。
さらに、ANAはアメリカ方面でも供給量を徐々に増やしている。同地域は10月時点で旅客数が前年同月比94.3%減となっているにもかかわらず、供給量(総座席数×輸送距離)を同66.5%減まで回復させるなど、同87.2%減だったアジア・オセアニアよりも早く再開させている。アメリカは貨物需要が下支えすると同時に、世界各地から羽田・成田を乗り継いでアメリカに行く旅客需要が、現地の感染状況の悪化を受けても弱まっていないという。
コロナでも消えない出張を探る
現地の航空会社との提携も重要だ。ANAが週7往復で通常運航できているアメリカ・ロサンゼルスやシカゴへの便の利用者は、現地のユナイテッド航空による各都市への乗り継ぎ便を確保できる。
そのため、直行便を通常運航できていない中堅都市などへの細かな渡航需要も取り込むことが可能となっている。
コロナ禍における旅客動向の変化を把握し、提携の有無や貨物収入を総合的に捉えることにより、5月に前年同月比88.4%減だった国際線全体の供給量を、11月時点で同77.0%減まで10%以上押し戻した。
ANAにとっては便数の増加とともに、出張需要の取り込みが今後の課題となる。コロナ前のANAは、単価の高い出張客の支持を集め、1便当たりの収益を最大化してきた。「深センのように工場が集積したエリアへの赴任・出張など、リモート会議では代替できない渡航者を期待できるような路線を見抜く目利きが必要となる」(航空業界幹部)。
とはいえ、足元ではイギリスで新型コロナの変異種が確認され、国内の感染も再び拡大している。赤字圧縮に向けて、国際線の一層の復便や新規就航は、ANAにとって重要なカギを握るが、その判断は容易ではない。
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