南紀白浜空港が見違えるほど変わった決定要因 周回遅れからトップ走者に躍り出た「やる気」

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「これから脱東京が始まる。働く場所がどこでもよくなったわけだから、地方にとっては大チャンス。コロナ対策もしっかりやって、ここで頑張ればほかの観光地の先を行ける」

和歌山県の南、海岸線からほど近い丘陵地に位置する「南紀白浜空港」。2019年4月、県から空港運営を引き継いだ南紀白浜エアポートの岡田信一郎社長は、この1年を振り返って選び取ってきた戦略に間違いはなかったと自信をのぞかせた。

現在、羽田と結ぶ日本航空(JAL)の国内便が1日3往復、6便運航している。現地を訪問した昨年12月中旬、出発便を待つ南紀白浜空港の搭乗ロビーにはスーツ姿のビジネス客が目立った。コロナ禍においても前年の同じ月と比較した航空便の利用実績は10月が88.2%、11月は97.6%で前年実績に迫った。全国路線平均の50〜60%台を大きく上回り、「かつての劣等生が、今は全国1位を快走している」(岡田社長)。

関西国際空港のりんくうタウンなどから旅行者を乗せてきた高速バス=2020年12月17日・南紀白浜空港(筆者撮影)

観光地として南紀白浜空港の立地は抜群

南紀白浜空港までは羽田から片道約1時間のフライト。空港からホテル、ビーチ、温泉街、そしてパンダで知られるアドベンチャーワールドまで、いずれも車で5〜10分圏内にある。白浜町が取り組むIT企業の誘致では、東京都内などからこれまでに10社以上が進出した。同町の井澗誠町長は「白浜を選んだいちばんの理由に空港の利便性を挙げる企業が多い。平日の宿泊客が増え、滞在日数が増加し、念願の通年型観光地に近づいた」と自負する。

エアポート社は、課題だった空港からの2次交通を充実させるために、東京や大阪、京都方面を結ぶ高速バスの乗り入れを働きかけ、目的地と空港をドアツードアでつなぐ配車サービスの導入にもこぎつけた。移動にかかるストレスを減らしたことで、南紀白浜エリアは都心で働く人にとって、快適さを兼ね備えた「通勤圏内」に加わった。

取材の途中で利用したタクシーの運転手に、民営化前後の変化を尋ねると口々にこう言った。

「以前の空港とはやる気が全然違う」

出発を待つ羽田行きの日本航空機。2019年10月から一部を165席の機材に大型化した=2020年12月18日、南紀白浜空港(筆者撮影)
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