聴衆の意表を突いた、キャメロン英首相 田坂広志 多摩大学大学院教授に聞く(4)
リスクの多い「聴衆との対話」
――たしかに、それは、「聴衆の意表を突く戦略」ですね・・・。
ええ、その通りです。
この場面で、多くの聴衆は、「キャメロンは、どのようなスピーチをするか」と期待しています。それに対して、キャメロンは、「スピーチの内容」で聴衆の評価を取るよりも、むしろ「質疑応答のスタイル」で聴衆の評価を取る戦略に出たわけです。
そして、この「聴衆の意表を突く戦略」を採ることによって、聴衆を自分の土俵に巻き込み、自分のペースでリードしていったわけです。
――それが、彼に、デビュー戦での成功をもたらしたと・・・。
そうです。では、なぜ、キャメロンは、こうした戦略を採ることができたのか?
そこには、一つの背景があります。
それは、彼が、YGLのメンバーであったことです。
YGLとは、Young Global Leadersの略。ダボス会議を主催する世界経済フォーラムが毎年選ぶ、世界の若手リーダーのことですが、キャメロンは、若い政治家の時代に、このYGLに選ばれ、ダボス会議という場に聴衆として参加し、逆の立場から、数多くの国家リーダーのスピーチを見てきたからです。
では、なぜ、キャメロンの「質疑応答のスタイル」が、戦略として成功したのか?
それが、「最もリスクのあるスタイル」だからです。