安倍首相の靖国訪問をきっかけに、軋轢が生じている日米関係。4月のオバマ大統領訪日は、日米関係改善の一歩となるのか。アジアおよび日米関係の専門家で、ピース・ウインズ・アメリカ(アジア太平洋地域の政府、軍、NGO、民間企業の協賛による防災組織、ワシントンに本拠を置く)のCOOを務める、ウェストン・S・コニシ氏に、今後の日米関係とオバマ訪日のポイントについて聞いた。
安倍首相は「空気が読めない」
――安倍晋三首相の靖国参拝に対する米国の対応について、あらためてどのように評価していますか?
米国の対応は適切だった。微妙だが、かなりはっきりした表現だった。オバマ政権は靖国参拝についての米国側の気持ちを日本に伝えるためにかなり舞台裏で努力してきた。しかし、それは安倍首相には通じなかった。失望したという声明はまだ余韻が続いている。一方で日本は非常に重要な同盟国であり、他方で靖国参拝や歴史をめぐる問題発言が北東アジアの関係をこじらせているという米国の見方は直截的だ。
――小泉純一郎元首相による靖国参拝に対して米国は批判をしません。そのときと今と何が違うのですか?
利害関係が一段と高まっている。尖閣諸島をめぐる中国との領土紛争は危険なほど高まっている。韓国との関係ではとりわけ竹島紛争がきわどい状況だ。全般的に東アジア地域の緊張は近年ぐっと高まり、特に靖国参拝は問題をこじらせている。米国が望んでいたのは安倍首相がより現実的な側面を重視し、この地域の政治状況にもっと配慮することだった。ところが、靖国参拝が行われ、さらにNHK幹部やそのほかの発言が飛び出し、事態はもっと失望を深めることになっている。
――米国政府にとってなぜそんなに問題なのですか?
日本政府で起こっている事態は、米国のアジア太平洋地域への「リバランス」(再均衡化)戦略を混乱させている。米国は日本にリバランスの先頭に立ってもらいたい。日本はアジア太平洋地域の同盟国のトップの存在であり、日本はその地域との関係がより前向きかつ安定していることが重要なのだ。それは米国の目的遂行に役立つものだが、残念ながら今はそうなっていない。現状は米国の対応が10年前と違っているということになってしまう。
――安倍首相は米国に対する判断を誤ったということでしょうか?
日本にいる多くの人たちはそう思っている。特に昨年12月に沖縄基地の問題が前進したことによって、靖国参拝やほかの歴史問題に対する米国の批判が弱まったのでは、という判断がある。安倍首相は何をやっても――たとえば靖国神社を参拝しても――米国は支持してくれるという誤った信頼感を持ったようだ。以前に政権についたとき、彼に対して「政治の風を読むのに失敗した(空気が読めない)」という批判が多かった。同じような政治力学が働いているように見える。安倍首相は戦略的、政治的な風を読むことができず、米国を立ち往生させている。
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