安倍政権の高支持率が続いている。しかし、経済、外交、防衛など難問は山積している。現在の高い支持率は、確固たるものなのか、それとも、容易に崩壊しうるものなのか。今後の安倍政権について、テネコ・インテリジェンス(ニューヨークに本拠を置く企業顧問会社・テネコ傘下のリスク評価部門)で日本専門家を務める、トビアス・ハリス氏に聞いた。
※前編はこちら:安倍政権の高支持率は、バブルか、本物か?
歴史問題と自民党の右傾化
――経済政策をめぐって民主党は自民党とよく似通っていますが。
野田佳彦前首相と安倍首相の政策の違いは金融政策、つまりアベノミクスの「第1の矢」だ。民主党は極端な金融緩和政策を採らなかった。しかし、成長戦略はよく似ている。民主党と自民党の成長戦略を重ね合わせると、ほとんど違いがわからない。二大政党制を支持するに足るだけの中道左派の投票数が十分でないというのは信じがたいことだ。ところが、それが日本の現在の政治状況なのだ。
――なぜ歴史問題が両党の分割線にならないのですか? 数年前には、最近のNHK幹部による発言は即時退職の原因になったはずですが。
あの発言は本当にショックだったが、NHKは内閣ではない。閣僚がああいう発言をしたらもっと論争になっただろう。橋下徹前大阪市長の慰安婦をめぐる発言も一時大きく問題になったが、その後、しぼんでしまった。また昨年、安倍首相は歴史学者を演じて、日本の“侵略”というのは定まった定義ではないと発言したが、早々と撤回せざるをえなくなった。言い換えれば、依然として“修正主義者”の歴史に対して後ずさりしている。
他方で、その問題が日本の大衆にも共感を呼んでいるとは思えない。人々は経済に対する関心が圧倒的で、世論調査が示しているように、日本の人たちに歴史問題について問えば、戦時中のことについて、かなり複雑で悲しみに満ちた感情を抱いていることがわかる。
現在、安倍首相は高い支持率で政権に収まっているが、その支持率は首相の歴史問題をめぐる右翼的な見解とはほとんど関係がない。たまたま彼にふさわしい時にふさわしい地位につき、魅力的な経済政策を採用している。彼の右翼的な見解は、彼が政権に返り咲いた基盤になっているわけではない。にもかかわらず、そういう見解が彼の政治的な雰囲気になっている。日本の大衆が歴史の修正主義的な見解を、暗黙的にも認めているとも思えない。
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