自民党の右傾化と、日米同盟のこれから トビアス・ハリス氏が語る安倍政権(下)

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――日本の右翼についてはどう評価していますか?

安倍首相が靖国神社に参拝し、日本は二度と戦争はしないと誓ったという発言や、首相が戦没者に敬意を表すことは当然のことだとする人たちがいると私も思う。他方で、中国は日本の指導者の戦没者への敬意を、いつ、どこでやるかを指示したがっていることに対して、激怒する人たちもいる。そういう人たちは靖国神社についてとくに強い意見を持ってはいないかもしれない。いずれにしても、中国の強い批判には反対している。そうしたもつれた動機や要因を解きほぐすのは難しい。

最近、組織的右翼は強い立場にある。彼らは日本の政治の中で最も組織化され、イデオロギー的に最も凝集したブロックとして有利な立場にある。左翼もある程度の強さを持っているが、資金、出版物、全体的な組織などを考慮すると、右翼にはかなわない。

自民党自身は右傾化している。世論調査や投票記録によると、それはここ数年の傾向であり、自民党の国会議員の右傾化はより決定的になっている。自民党所属の幅広いメンバーでは、もっと多様性があるが、安倍首相は自民党の国会議員のイデオロギー的傾向をかなり濃厚に反映している。

また自民党は2012年の衆院選では、2009年の衆院選より得票数が少なかったということを銘記しておく必要がある。安倍首相にとって本当の使命(特に歴史問題での)があったとすれば、自民党の得票数はもっと多かっただろう。

議会制民主主義においてはさまざまな気まぐれが起きる。ということを理由に、安倍首相は大抵自分の居場所にいる。自民党の体裁は絶えず変化する。そういうことを理由に、安倍首相は修正主義者の見解にこだわる最後の首相とはおそらくならない。それは日本の政治が前進していくための恒久的な特徴かもしれない。ただ、あまりに多くの結論を引き出すことには、注意することが重要だ。

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