安倍政権の高支持率が続いている。しかし、経済、外交、防衛など難問は山積している。現在の高い支持率は、確固たるものなのか、それとも、容易に崩壊しうるものなのか。今後の安倍政権について、テネコ・インテリジェンス(ニューヨークに本拠を置く企業顧問会社・テネコ傘下のリスク評価部門)で日本専門家を務める、トビアス・ハリス氏に聞いた。
安倍政権の高い支持率は錯覚か?
――安倍晋三首相は高い支持率を維持できると思いますか?
安倍首相の高支持率にはいくつか要因がある。ひとつは経済政策がうまくいっているように見えることだ。家計所得が上がるなど具体的な結果ではなく、いろいろな面で経済が変わってきていると言われているからだ。経済重視の政策のおかげで支持率は高い。もしも防衛や安全保障などの問題に偏重し、予定されている消費税引き上げが予想以上に経済に痛手になれば、支持率は下がるだろう。
安倍首相を支持する以上に、有権者は民主党に深く失望している。それが高い支持率に反映している。有権者はこう言っている。「民主党にやらせてみたが、うまくいかなかった。政治的展望についてはともかく、安倍首相は少なくとも経済についてはいいことを言っているし、うまくやっている。だから支持している」と。
しかし、その支持はいかに薄っぺらかということを示している。高支持率が長く続いていることには私も驚いているが、その強さは錯覚かもしれない。安倍首相に対する支持は数字ほど強くない。仮に少しでもうまくいかないことがあれば、支持率は雪だるまのように転がり落ちるだろう。
――世論調査によると、有権者の70%はアベノミクスの具体的なインパクトを感じていないと言います。
その数字はまだ低いほうだ。世論調査によっては75~80%の有権者がそう感じている。安倍首相が指示している賃上げ交渉が分岐点にさしかかっている。家計所得が増えなければ、支持率は下がる。実感的な成果が得られなければ、高い支持率はバブルということになり、破裂するか急低下する。
経済問題を重視し続ければ、その打撃は限定的かもしれない。しかし、防衛など非経済的な問題に余計に重きを置き、そういう状況の下で経済が落ち込んだりすると、安倍政権はかなりのトラブルに巻き込まれる。
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