安倍首相の靖国参拝は成功だったのか? 靖国参拝で、漁夫の利を得た中国
中国の「虚」を突いた安倍首相
1年の最後の行事であるクリスマスも過ぎ、街が年の瀬ムードになった途端に行われた安倍首相の靖国神社参拝。「私人として」といえども、安倍政権発足1周年をメドに行われたという理由からして「現職首相」であることを意識しての参拝であろう。
またこれまでの参拝は靖国神社側の祭事への参加を理由にしたものだったことから見ても、今回は明らかに「公式参拝」の匂いを漂わせたものとなった。参拝後に発表した談話も、すでに「私人」というレベルではなく、首相としての態度表明に近い(談話全文はこちら)。
ただ、安倍首相は「うまく」やった。これまで歴代首相あるいは閣僚による靖国「私人」参拝のたびに、中国政府が声高に非難してきたことを逆手に取るかのように、口では「私」と言いながら「公」の立場からに限りなく近い談話を発表したのだから。実のところ、中国はこれまでの靖国参拝で非難の「弾」を散々使い切ってしまった。その上、日中関係は2012年の秋以来過去最悪なのは周知のとおり。安倍首相はそれらを知ってか知らずか、相手の虚を突いた。
第一報が流れた時、日本メディアは「すわ!」と大騒ぎになり、在中国日本大使館もメーリングリスト登録者に対して安全注意を呼びかけるメールを送ったという。そう、客観的に見れば、これはこじれにこじれた日中関係という火に油を注ぐ行為だったことは間違いない。だからこそ、第三者の海外からも安倍氏に批判が飛んだ。
一方で、安倍首相の靖国参拝が伝えられたその時、中国では習近平ら中国共産党のトップ主導者たちは毛沢東の生誕120周年を記念し、その遺体が眠る記念堂を揃って訪れていた。そのあまりのタイミングに中国のインターネットは興奮状態となった。
「つまり、中国と日本は同じ日に鬼を参ったってことか」
「どっちもたくさんの中国人を殺したのは同じだよね」
「いや、あっちは外国人を殺したが、こっちは自国人を殺したんだ
「本当に中国人民の気持ちを傷つけるのは、いったいどっちなのか」…
中国では毛沢東時代に味わった辛酸を覚えている人たちはまだまだ多い。習近平が国家主席に就任してからたびたび毛を持ち出し、懐古趣味にひたっていることに自由派や改革派は大きな不満と不安を抱いている。偶然重なった安倍首相の靖国参拝は、そこに格好の「寓話的話題」を投げ込んだのである。
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