聴衆の意表を突いた、キャメロン英首相 田坂広志 多摩大学大学院教授に聞く(4)

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――誰でしょうか?

2011年のメドベージェフ・ロシア大統領ですね。彼は、「位取りの戦略」で失敗したのです。

田坂 広志 たさか ひろし 世界経済フォーラム(ダボス会議)Global Agenda Councilメンバー。多摩大学大学院教授。
 1974年東京大学工学部卒業。81年東京大学大学院修了。工学博士(原子力工学)。米国シンクタンクBattelle Memorial Institute客員研究員などを経て 日本総合研究所の設立に参画。取締役・創発戦略センター所長等を歴任。現在、同研究所フェロー。 2000年多摩大学大学院教授に就任。同年、21世紀の社会システムのパラダイム転換をめざす、シンクタンク・ソフィアバンクを設立、代表に就任。08年にダボス会議を主催するWorld Economic ForumのGlobal Agenda Councilのメンバーに就任、09年からTEDsterとしてTED会議に毎年参加。 11年には東日本大震災と福島原発事故の発生に伴い、内閣官房参与に就任。総理大臣の特別顧問として、原発事故対策、原子力行政改革、エネルギー政策転換に取り組む。 昨年は全国から1000名の経営者やリーダーが集まり、「変革の知性」を学ぶ場、「田坂塾」を開塾(撮影:大澤 誠)

――「位取りの戦略」ですか?

ええ、ダボス会議における国家リーダーのスピーチにおいては、実は、「スピーチの内容」以前に、「いかなる立場でスピーチを行うか」という「位取り」が重要になるのですが、メドベージェフは、その「位取り」を誤った。

「ロシアという一国のリーダー」としてスピーチを行ってしまったのです。

――国家リーダーが、「一国のリーダー」としてスピーチをするのが、何が問題なのでしょうか?

ダボス会議は、「Improving the State of the World」が理念の組織です。世界の現状をより良きものにするために、世界のトップリーダー2500名が集まっている場です。その場においては、先進国G8サミットの国家リーダーであるならば、「一国のリーダー」としてではなく、「世界のリーダー」としての「位取り」で、スピーチをしなければならないのです。

それにもかかわらず、メドベージェフは、あたかも「政策スポークスマン」のごとく、ロシアの政策を、延々と述べた。それが、聴衆から不評を買い、彼の「ダボス会議デビュー戦」は、失敗に終わったのです。

これに対して、逆に、首相としてのデビュー戦を、見事なパフォーマンスで乗り切ったのが、キャメロンでした。前年5月の総選挙で、労働党に勝利し、自由民主党との連立で政権を獲得した保守党党首、キャメロンは、このとき44歳。

その若き国家リーダーが、ダボス会議のプレナリー・セッションで、初めての基調講演を行う。野党党首としては、前年のダボス会議にも出席し、パネル討論にも登壇していますが、イギリス首相として基調講演を行うのは、初めてです。

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