ダボス会議で最高のスピーカーは誰か 田坂広志 多摩大学大学院教授に聞く(1)
毎年1月、世界のトップリーダー2500名がスイスの保養地ダボスに集まる「ダボス会議」。このダボス会議を主催する世界経済フォーラムの「Global Agenda Council」のメンバーとして、毎年、この会議に出席しているのが田坂広志氏だ。
同氏は、ビル・クリントン元米大統領、アル・ゴア元米副大統領、トニー・ブレア元英首相、ゴードン・ブラウン前英首相、デーヴィッド・キャメロン英首相、ニコラ・サルコジ前仏大統領、アンゲラ・メルケル独首相、ウラジーミル・プーチン露大統領、さらには、ビル・ゲイツ・マイクロソフト共同創業者・元会長、ムハマド・ユヌス・グラミン銀行創設者など、数多くのトップリーダーのスピーチを聴いてきた。
では、同氏が出席してきたダボス会議で、最高のスピーカーは誰か。これから全4回にわたって、強く印象に残っている4人のリーダーの話術について、語ってもらう。第1回は、ニコラ・サルコジ前フランス大統領のスピーチについて伺う。
「胆力」で聴衆を呑んだサルコジ前フランス大統領
――ダボス会議において、フランス前大統領のニコラ・サルコジのスピーチを聴いたとき、その印象は、どうだったでしょうか?
フランスは、大統領クラスになると、誰もがスピーチはうまいので、サルコジも、スピーチの技術はうまいのです。しかし、初めて彼のスピーチを聴いたとき、その「技術」よりも、その「内容」に驚きました。
彼のスピーチを聴いた瞬間、
「この聴衆の前で、こんな話をして良いのか?」
「聴衆は、内心、相当な反発を感じているのではないか?」
そう感じたのですが、次の瞬間、何が起こったか?
彼は、話術における「究極の力量」と呼ぶべきものを使ったのです。
そして、一瞬にして、その場の雰囲気を制したのです。
――「究極の力量」とは、何ですか?
「胆力」です。
いまや、日本において、この言葉は「死語」となりつつありますが、サルコジは、その「胆力」によって、ダボス会議の場を制したのです。
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