安倍政権は「ダボス公約」を実現せよ

アベノミクス新年度の課題(3) 竹中平蔵

たけなか・へいぞう 慶應義塾大学教授。1951年生まれ。小泉政権では金融相、経済財政相、総務相などを歴任。2009年にパソナグループ会長。13年に産業競争力会議の民間議員に。

──起承転結で例えると、アベノミクスは「起」で大胆な金融政策や財政出動を行い、「承」として成長戦略をまとめた。今はどのようなステージといえるか。

アベノミクスの第3の矢である成長戦略は、第1の矢の金融政策や第2の矢の財政政策とは性格が違う。金融や財政はどちらかといえば需要側に働きかける政策で、効果は比較的早く表れる。金融政策は期待の変化を通してそれが表れる。財政政策も公共事業を通して景気を刺激できる。

一方、成長戦略はほとんどが供給サイドの政策で、実現には時間がかかるため、金融や財政と同じ次元では考えにくいテーマだ。今は起承転結の中で「転」の時。ただし、成長戦略を実践する「承」から「転」に向かうには時間がかかる。アベノミクスは胸突き八丁のところにあると思う。

現場に乏しい熱意

──安倍晋三首相は今年1月のダボス会議の講演で、今後の改革方針を示した。

これまで44回行われてきたダボス会議の歴史の中で、日本の首相がオープニング基調講演に招かれたのは初めてだ。昨年1年間で日経平均株価は57%近く上昇した。これは米国やドイツよりも高く、そうとう目立つ。

安倍首相はスピーチの中で、自身が既得権益の岩盤を打ち破るドリルの刃になると言っている。そして、国家戦略特区の枠組みを使い、今後2年で(医療や農業など)あらゆる岩盤規制に突破口を開くという。いわば思い切った規制緩和だ。

法人税を国際的に競争できる水準にすることや、女性が活躍できる場を作るため、家事や介護分野で外国人労働者を活用することにも触れた。運用資産120兆円を保有する世界最大の公的年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の改革についても述べている。これらを実現すれば、アベノミクスは完結に向かう。要は、「ダボス公約を実現せよ」だ。

しかし、今の状況を見ていると、首相がここまで言ったにもかかわらず、霞が関はそれを十分に反映して動いているようには見えない。そのギャップをどう埋めていけるかが重要だろう。

次ページ東京都の改革案が弱い
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • トクを積む習慣
  • 最新の週刊東洋経済
  • 自衛隊員も学ぶ!メンタルチューニング
  • ポストコロナのメガ地経学ーパワー・バランス/世界秩序/文明
トレンドライブラリーAD
人気の動画
商社大転換 最新序列と激変するビジネス
商社大転換 最新序列と激変するビジネス
「話が伝わらない人」と伝わる人の決定的な差
「話が伝わらない人」と伝わる人の決定的な差
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
自動車販売会社の『車検』争奪戦が熾烈なワケ
自動車販売会社の『車検』争奪戦が熾烈なワケ
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
日本企業は米中の板挟み<br>全解明 経済安保

先端技術をめぐる米中の争いは日本に大きな影響をもたらします。海外からの投資は経済を活性化させる一方、自国の重要技術やデータが流出し安保上のリスクになる可能性も。分断の時代に日本企業が取るべき進路を探ります。

東洋経済education×ICT