安倍政権は「ダボス公約」を実現せよ アベノミクス新年度の課題(3) 竹中平蔵
──起承転結で例えると、アベノミクスは「起」で大胆な金融政策や財政出動を行い、「承」として成長戦略をまとめた。今はどのようなステージといえるか。
アベノミクスの第3の矢である成長戦略は、第1の矢の金融政策や第2の矢の財政政策とは性格が違う。金融や財政はどちらかといえば需要側に働きかける政策で、効果は比較的早く表れる。金融政策は期待の変化を通してそれが表れる。財政政策も公共事業を通して景気を刺激できる。
一方、成長戦略はほとんどが供給サイドの政策で、実現には時間がかかるため、金融や財政と同じ次元では考えにくいテーマだ。今は起承転結の中で「転」の時。ただし、成長戦略を実践する「承」から「転」に向かうには時間がかかる。アベノミクスは胸突き八丁のところにあると思う。
現場に乏しい熱意
──安倍晋三首相は今年1月のダボス会議の講演で、今後の改革方針を示した。
これまで44回行われてきたダボス会議の歴史の中で、日本の首相がオープニング基調講演に招かれたのは初めてだ。昨年1年間で日経平均株価は57%近く上昇した。これは米国やドイツよりも高く、そうとう目立つ。
安倍首相はスピーチの中で、自身が既得権益の岩盤を打ち破るドリルの刃になると言っている。そして、国家戦略特区の枠組みを使い、今後2年で(医療や農業など)あらゆる岩盤規制に突破口を開くという。いわば思い切った規制緩和だ。
法人税を国際的に競争できる水準にすることや、女性が活躍できる場を作るため、家事や介護分野で外国人労働者を活用することにも触れた。運用資産120兆円を保有する世界最大の公的年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の改革についても述べている。これらを実現すれば、アベノミクスは完結に向かう。要は、「ダボス公約を実現せよ」だ。
しかし、今の状況を見ていると、首相がここまで言ったにもかかわらず、霞が関はそれを十分に反映して動いているようには見えない。そのギャップをどう埋めていけるかが重要だろう。
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