安倍政権は「ダボス公約」を実現せよ アベノミクス新年度の課題(3) 竹中平蔵
──3月28日、国家戦略特別区域諮問会議(竹中氏も有識者議員の一人)で、東京圏から沖縄県まで、6カ所の特区指定案が了承された。
ワーキンググループでヒアリングも行い、会議の民間議員の意向を強く反映したものになった。われわれは二つのことを求めてきた。一つは、大都市圏を中心とする国際センター的なものになるような特区を設けること。もう一つは、正式な言葉として使われてはいないが、機能でつながる「バーチャル特区」だ。
今回は広域地区として選ばれたのが東京圏と関西圏。また、農業分野では兵庫県の養父(やぶ)市、ベンチャー分野が福岡市だ。バーチャル特区の出発点となるような所も選ばれているので、おおむねよい方向に向かっている。
──特区を推し進めるうえで、今後のポイントは。
二つある。まず、広域地区について、どの範囲まで広げるのかということ。可能性はいろいろなところにあるので、視野を広くすることが重要だ。たとえば、東京圏は東京都と神奈川県の全域を対象にすればいい。だが、範囲を狭くして無難にやりたいという事務方との間で意見の対立はある。二つ目は、今後立ち上がる区域会議だ。これがうまく機能するかどうかは、地方の首長のやる気が重要になる。
そういった意味で、今、われわれが懸念しているのは、東京都の改革案が非常に弱いことだ。
パッションをもって相手を説得
──特区会議の概要案の資料には、東京都に対し、「規制改革事項等の内容の一層の充実を求めることとする」と、注記のようなものがある。
実は、そういうことをわざわざ書いているというのは、すごいことなんですよ。
──そうすると、特区は岩盤を打破するドリルになるのか。
仕組みとしてはなりうる。首相は改革へのパッション(情熱)を持っているから。次はそれを運用していく段階で、実際にやる人たちがどれだけ熱心さを持っているか。具体的には事務局や首長など、利害関係者がたくさんいる。霞が関の役人もそうだ。
特区の法律には、雇用や医療、農業など複数の岩盤規制改革項目が明記されている。だが、規制改革をやろうと言っても何も進まない。一つひとつ成果を出すには、反対する関係者と議論し、パッションを持って相手を説得しなければならない。
──日本銀行は昨年4月に巨額の国債買い入れを打ち出してロケットスタートを切った。だが、消費増税後の反動減では、対応が難しくなる。
日銀に求められている成果は、2年で物価上昇率2%を実現すること。そして、目標はデフレの克服だ。
ここまでは予想を上回ってうまくいっていると思う。足元の消費者物価指数(CPI)は1%半ばで、コア指数(生鮮食品を除くCPI)でもプラス。何年か前までマイナス1%ぐらいだった状況と比べると様変わりした。しかし、消費増税で景気には影響が及ぶ。2%という物価目標を目指す中、日銀はマイナスの結果が出ないような措置を講じる必要がある。
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