日本の男は自分の履く「ゲタの高さ」を知らない 袋小路に入っている日本に突然変異は起こるか
出口:そもそもなぜ30だったのでしょう。
上野:経営学の用語に「黄金の3割」という言葉があります。「クリティカルマス(臨界質量)」とも呼ばれます。集団の中で少数派が3割を越すと、少数派は少数派でなくなって、組織文化が変わる。その分岐点だと言われています。ですから意味のある数字ではあります。
出口:フランスは2000年に、国会議員選挙の候補者は各政党で男女同数にしなくてはならないという「パリテ法」を制定しました。
それによって、制定当時、国会の女性議員の割合は日本とさほど変わらない1割程度だったのが、今では4割近くに達しています。
上野:それは強制力のあるクオータ制を作ったからですね。
出口:男女同数の候補者を揃えないと政党交付金が減らされるというものでした。
日本の候補者均等法にはペナルティがない
上野:日本の候補者均等法には、ペナルティがありません。
出口:インセンティブのない制度はワークしませんね。フランスのように思い切ってやらないと。
上野:韓国も改革のスピードが速く、あっという間に女性家族部という省庁ができました。性暴力禁止法も成立しました。日本は立ち遅れました。
出口:韓国は一度、経済が潰れそうになったので危機感が強くあったのかもしれません。
上野:やはり危機が来ないとダメなんでしょうか。日本の危機はすでに相当深刻だと思いますが。
クオータ制は、これまでずっと女性団体が提案してきました。ですが日本では、政財界にいる人が、クオータ制は賛成できない。能力のない人をポジションにつけるという逆差別になるといいます。ある財界トップの、「クォータ制はわが国の風土になじまない」という発言を聞いてのけぞりました。反対の理由を合理的に説明できない、と言っているのと同じです。
出口:人口の男女比は半々ですから、能力のある人の割合も同じはずです。クオータ制がいちばん正しいと思います。逆差別だと騒いでいる人は、男性がいかに高いゲタをはいているかという実態に気づいていないのです。
上野:裏返せば、これまで男だというだけで能力のない人たちをポジションにつけてきたということです。
出口:ある企業の研修に講師として呼ばれて行ったことがあります。次の幹部候補生を20人くらい集めていたのですが、そこには女性が1人もいませんでした。