日本の男は自分の履く「ゲタの高さ」を知らない 袋小路に入っている日本に突然変異は起こるか

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上野:幹部候補生の20人に?

出口:はい。社員の男女比は6対4なのに。それで、僕は社長に「なぜ女性がいないんですか?」と聞いたら、「この1年間、女性を抜擢しようと思って目を皿のようにして探しましたが、見つかりませんでした」と言われたので、「その考えが間違いです」と答えました。

これまで幹部に女性がいなければロールモデル自体がないわけですから、ふさわしい人が育っているはずがない。だから、「あみだくじでいいから最低3割くらいは女性幹部を任命してください」と述べました。

最初の1年は社長の目にかなわないかもしれませんが、2年、3年と続ければ立派な人は必ず出てきます。「それがクオータ制の本当の意味です」と話しました。

変人パワーが社会を変える

出口:歴史を見ていると、変わった人が突然ふらっと現れて社会を変えることがあります。遺伝でいえば突然変異のようなことが社会にも起こります。スケールの大きい例でいえば、ゴルバチョフがまさにそうです。

上野:失脚しましたね。

出口:ソビエト連邦の官僚組織の中で生き残って書記長にまでのぼりつめて、ペレストロイカ(改革)とグラスノスチ(情報公開)を断行しました。結果としてソビエト連邦という大帝国が解体し、東ヨーロッパが解放されたのです。

自分は失脚するとしても、そういう変わった人が現れてステージを前に進めることがあります。

歴史を見れば世界でそういう例はたくさんあって、国際連盟の創設を呼びかけたアメリカの大統領ウッドロウ・ウィルソンもそうです。結局、自分の国は国際連盟に加盟しませんでしたが、彼が掲げた「14カ条の平和原則」はものすごくインパクトがあるもので、朝鮮の3・1独立運動や中国の5・4運動にも大きな影響を与えています。そういう変わった人が突然現れて社会を動かすことは実際あるのです。

『あなたの会社、その働き方は幸せですか?』(祥伝社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

上野:歴史は必然と偶然の組み合わせですからね。

出口:偶然の要素が圧倒的に大きいと思います。ダーウィンを祖とする「進化論」は、突然変異はランダムに起きると述べています。ロジックを突き詰めれば、日本はもう袋小路に入ってしまっていて衰退するよりほかはないように見えないこともないのですが、突然変異が起きるかもしれない。

上野:私たち団塊世代は、時間が経てば現在よりも将来はよくなるという根拠のない楽観を持っているのですが、団塊ジュニアはその反対で、時間が経てば今より悪くなると思っている人たちです。この世代間ギャップは大きいです。

出口 治明 立命館アジア太平洋大学(APU)学長

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でぐち はるあき / Haruaki Deguchi

1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業後、日本生命保険相互会社入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2005年に同社を退職。2008年にライフネット生命を開業。2017年に代表取締役会長を退任後、2018年1月より現職。『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『人類5000年史Ⅰ』(ちくま新書)、『「全世界史」講義Ⅰ、Ⅱ』(新潮社)、『仕事に効く教養としての「世界史」Ⅰ、Ⅱ』(祥伝社)、『本の「使い方」1万冊を血肉にした方法』(角川oneテーマ)、『教養は児童書で学べ』(光文社新書)、『ゼロから学ぶ「日本史」講義Ⅰ』(文藝春秋)など著書多数。

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上野 千鶴子 社会学博士。東京大学名誉教授

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うえの ちづこ / Chizuko Ueno

一九四八年富山県生まれ。京都大学大学院修了。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。女性学・ジェンダー研究のパイオニアとして教育と研究に従事。著書に『家父長制と資本制』 『おひとりさまの老後』『在宅ひとり死のすすめ』などがある。

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