元ガンプラ少年が「動くガンダム」実現した半生 ロボ研究→建機メーカー勤務の技術屋が尽力

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正式にプロジェクトに加わったのは、始動から4年が経った2018年のこと。2009年にお台場でお披露目された実物大ガンダム立像を見て『機動戦士ガンダム』のアニメ監督である富野由悠季氏が放った「腕1本くらい、動かしてみろ」という一言をきっかけに、バンダイナムコホールディングスの傘下でスタートしたこの企画。

世界中からガンダムを動かすためのアイディアを公募することから始まり、2016年ごろには動かすために必要な要素技術を提供する協力企業を募る段まで進んでいた。

石井氏が勤める日立建機のもとにも打診は来たが、会社としては辞退。ただ、プロジェクトから技術的な知見を請われ、オブザーバーとして有識者による開発会議に参加するように。そこで直面したのが、開発の技術的な指揮を執る現場監督がいなかったことだ。

立ちはだかった「2足歩行」の壁

プロジェクトを担う会社の母体はエンターテインメントの企業だ。技術的な知見があるわけではない。かといって、ガンダムの関節に搭載し滑らかに動かすために使われる「減速機」を提供するナブテスコなど、技術を持ち寄った9社はあくまで協力企業であるため、そのうち1社が責任を負って全体を仕切ることは難しい。

「誰かが専任で取りまとめないとうまくいかないんじゃないかと感じ、その役割を自分がやりたい、と名乗り出ることにしました」。こうして2017年の夏、専任担当としてプロジェクトに加わることを決断した。

もっとも、前述のように18メートルのガンダムを動かすのは難しい挑戦だ。そもそも、「動く」といっても18メートルのガンダムを独立した状態で2足歩行させることは、最初から諦めざるをえなかった。

「仮に180センチメートル、100キログラムの人型ロボットをガンダムの設定である18メートルに拡大したとしましょう。身長が10倍になると、重さはその3乗の1000倍、100トンになります。すると、関節1つ動かすにしても、材料の強度がもたない。さらに、自律歩行には転倒がつきものです」

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