元ガンプラ少年が「動くガンダム」実現した半生 ロボ研究→建機メーカー勤務の技術屋が尽力
「ガンダム、起動!」
掛け声とともに、全長18メートル・重さ25トンの巨大なガンダムがゆっくりと前に歩行してきた。腰の部分を後ろから柱で支えられつつも、頭部、腕、脚、指などの関節は滑らかに動く。しゃがんで片ひざ立ちをするといった複雑なポーズも、違和感のない動きでこなしてみせた。
12月19日、横浜港の山下ふ頭(神奈川県・横浜市)で一般公開が始まった、"実物大”の動くガンダム。見た目こそアニメに登場するガンダムそのものだが、外装に覆われた骨組みや、このガンダムをつっている支柱は構造的にクレーン車など重機のそれ。ソフトウェアの制御システムは、工場などで稼働する産業用ロボットに使われているものだ。
それぞれの要素技術は既存のものだが、これらを組み合わせて6階建てビル相当の巨体を動かそうとなると、難易度はぐっと高くなる。
キーマンは「辞め日立建機」のエンジニア
この挑戦が実現した舞台裏には、1人のロボットエンジニアの奮闘があった。ハード面での設計・制作全般を主導した同プロジェクトのテクニカルディレクター・石井啓範氏(46)だ。石井氏は建設機械メーカーである日立建機の研究開発部門に所属し、"ガンダム建機”の俗称で人気を博した双腕の重機「アスタコ」をはじめ、人型でこそないが斬新な建機を複数手掛けてきた過去を持つ。
日立建機には20年近く勤めてきたが、このプロジェクト唯一の専任メンバーとして現場を率いるべく退職。会社のキャリアを捨てる大胆な決断だったが、石井氏の周囲は意外にもすんなりと受け止め、応援してくれたという。
「妻に相談したら、『まあ、いいんじゃない』と。会社に話したときも『それなら納得だね』と言ってもらえました」(石井氏、以下のカギカッコ内も同じ)。「それ」というのも、石井氏は子どもの頃から「ガンダムを造ること」をずっと夢見てきたからだ。
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