銚子丸が「人が辞めない会社」に大転換できた訳 カギは「働き方改革」、コロナ禍でも収益上げる

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小室:コストアップになるのに、すごい決断でしたね。ここは銚子丸の働き方改革において最大のポイントだったと思います。単に残業を禁止して残業代を浮かせようとする企業では、「あれは給与を減らすためにやっているのだ」と従業員の経営に対する不信感が募り、会社へのロイヤルティーやモチベーションが下がってしまい、その先の「売り上げ」にはつながらないのです。

石田:われわれの「本気度」を見せるために、今は「30時間」まで引き下げました。コロナによる営業時間(並びに労働時間)短縮もあり、期せずして短期間で30時間が定着しています。

小室:休暇取得状況についてはいかがでしょう。

石田:2018年の有給取得日数は1400日程度でしたが、現在は5000日まで増えています。

小室:3倍ですか。素晴らしい成果ですね。

店を閉めても売り上げが下がらなかった理由

石田:2019年10月から「リフレッシュ休暇」や「劇団員ファミリーホリデー」も作りました。年末年始は銚子丸の超繁忙期です。ですからその前後に2~3日間の休業日を設け、家族と過ごすリフレッシュ休暇をとってもらおうという制度です。お正月やゴールデンウイークなどの大繁忙期が過ぎた後は、一時的に売り上げが下がるタイミングがあります。そこに、しっかりと店休日を設けて一斉に休んでもらうことにしました。自分1人だけ休むのは、気がひけますからね。前々から休みの予定が分かっていることで、家族と旅行に行くこともできます。

外食企業にとって店を閉めることは売り上げ減に直結しますが……(撮影:風間 仁一郎)

小室:しかし、お店を閉めれば、その分、売り上げが下がりますよね?

石田:ええ、顕著に下がります。銚子丸は日銭商売ですから、難しい決断ではありましたが、従業員を休ませることを優先させました。ゆっくり休んで従業員のストレスが軽減されれば、今日もお客様を楽しませようという仕事のモチベーションにつながります。生き生きとした笑顔が増えれば、従業員同士のコミュニケーションがスムーズになるでしょうし、接客態度も向上します。リピーターが増えれば、収益アップにつながります。

小室:お話を聞いていて思い出されるのは、私たちが4年間コンサルティングに入っていた愛知県警察さんの働き方改革です。暴力団対応の刑事さんたちの部署では、事件が起きると刑事たちは一斉に現場に詰めかけ何日も張り込みが続きます。企業でいう、繁忙期ですね。かつては体力が尽きるまで皆で張り込みを続けていたのですが、働き方改革の取り組みの中で、現場の状況を見定めて、リーダーは「10人中2人は署に戻れ」といった「戻る」指示を明確に出すようになりました。

そうすることで束の間の休息がとれて次の事件に備えられて、なんと検挙率があがって表彰されたのです。つまり、大切なのは繁忙期に向けて高いエネルギーを維持すること。そのために思い切って「いったんしゃがみこむ」ことが重要なのですね。

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