サクナヒメが「作業ゲーでも飽きない」納得理由 敵は鬼!稲を育てて強くなれ!米は力だ!

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出自も目的もまったく異なる人間5人と1つ屋根の下で暮らすサクナヒメ。そこでは喧騒やいざこざもあるが、プレーを進めるにつれて関係が深まっていく。そこでなされる会話から、プレーヤーは世界観を深掘りしていける。

朝起きて田んぼの様子を確認し、探索に出かけ、食事効果が切れたら家に帰り、また田んぼの様子を確認し、明日の予定を考えながら食事をして眠る。

そんなローテーションを繰り返しているうちに、プレーヤーは気づくのである。システムの都合から仕方なくわが家に帰るのではなく、帰りたいわが家がそこにあることに。

昼間は全力で遊んで、夕方になってお腹が空いたら家に帰る。家族と食卓を囲み、明日を楽しみにしながら眠りにつく。『サクナヒメ』のシステムは、そんな誰もが子どもの頃に経験したであろう懐かしい経験を、思い起こさずにはいられないのである。

よくある話なのに、飽きないのはなぜか

生活を続ける中で、サクナヒメにとって人間たちと共に暮す「わが家」は、何にも代えがたい場所に変化していく。都にいた頃はぐうたら三昧、ワガママ放題だった彼女も、守るべき場所を見つけて心身共に成長していくのだ。

成長を重ねた末、島に鬼を生みだし続ける元凶を倒すことを決意する。ストーリーとしては極めて王道ではあるが、サクナヒメにとってはもちろん、プレーヤーにとってもわが家が大切な場所であるからこそ、単純でいかにもなストーリーにも白々しさを感じず、彼女の決意が素直に心に染みるのである。

『天穂のサクナヒメ』は間違いなく良作である。

赤木 智弘 フリーライター

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あかぎ ともひろ / Tomohiro Akagi

1975年栃木県生まれ。2007年にフリーターとして働きながら『論座』に「『丸山眞男』をひっぱたきたい――31歳、フリーター。希望は、戦争。」を執筆し、話題を呼ぶ。以後、貧困問題などをテーマに執筆。主な著書に『若者を見殺しにする国 私を戦争に向かわせるものは何か』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』などがある。

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