「GoTo停止」の衝撃、ちらつくホテル特需の終焉 絶好調のリゾートホテルも浮かれていられない

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GoToが始まる以前から、「コロナ禍では自宅から車で1~2時間で行ける地域を旅行する『マイクロツーリズム』がカギになる」と主張し続けてきたのが、星野リゾートの星野佳路代表だ。同社の「星のや京都」は8月の稼働率が9割超となり、現在に至るまで好調が続く。昨年は全体の半数近くをインバウンド客が占めたが、この消失を近場の客で補っている。

赤羽一嘉国土交通大臣は11月24日、GoTo利用者4000万人に対し、宿泊期間中の陽性判明は45人にとどまるとの事実を指摘しつつ、「医療逼迫を回避するために(中略)より強い措置を講じなければならない段階」と語った(編集部撮影)

具体的な集客の戦術には地元産の食材を駆使し、かつ新しい食べ方を提案すること、地域と連携したアクティビティの開発、地元向けにタウン誌などでの情報発信を強化することなどだ。遠方からの客が年に数回も宿泊することはないが、マイクロツーリズムの客は何度も訪れる可能性があるという。これこそ、同社がマイクロツーリズムを重視する理由なのだ。

また、高級ホテルでは、GoToを機に訪れた若い層をリピーターとして取り込む努力も必要だ。「従来の客層よりも10~20歳ほど若い宿泊客が増えた」との声は多く聞かれる。資金と時間に余裕のある年配の常連客に力を注ぐだけでは、GoTo後に客を維持することはできないだろう。

ビジネスホテルは業態転換まで検討

一方、ビジネスホテルは、出張需要の早期回復が期待できず、GoTo効果もないため、前代未聞の危機を抜け出せずにいる。それゆえに、「宿泊特化型」という、従来の枠を超えた取り組みも始まっている。

シンプルな朝食が付くのが定番だが、周辺の地元飲食店と提携した夕食付きプランを始めたホテル。そのほか自治体のキャンペーンと連携したプラン、長期滞在プランをアピールするホテル。一部フロアにデイサービス設備を導入するなど、業態変更の検討を始めたケースまである。各社とも何らかの付加価値を打ち出したり、独自のノウハウを生かそうとしている。

「金融危機でも震災でも、これほど需要が落ち込んだことはなかった」。業界幹部が語るように、GoToは自助努力のレベルを超える需要減から旅行業界を救うキャンペーンだった。だが、いつかは終わる。今回のように、コロナの感染動向次第で突然除外されることもある。強力な割引がなくとも客を呼べる知恵とサービスの創出が、今こそ求められているのだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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