記憶力が「人間力にもつながる」その驚きの理由 知られざる「非認知能力」の重要性

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そもそもなぜ記憶力がEQに関わってくるかというと、非認知能力、いわゆる心に関係する能力といっても、もとは脳の中の働きには違いないからです。情動や意志も脳の中で生み出されるものであり、それを制御するのもまた脳の機能というわけです。つまり、認知能力の記憶力もEQもそれらを働かせるためには共有するメカニズムが脳にはあるということなのです。

認知の記憶力と非認知の集中力の関係

それを示す1つの例として「集中力」を挙げたいと思います。「集中する」とは気持ちに関わる能力ということになるので、集中力も非認知能力といえるでしょう。この集中力という能力は、人それぞれ、いろいろな捉え方があり、ある意味抽象的で定義づけが難しい能力ですが、いずれも周囲の雑音を排除して1つのことに取り組むことができるという点においては共通しています。この集中力、実は記憶力ととても近しい関係にあるのです。

私は個人的に記憶力とは、ほぼ集中力とイコールなのではないかとさえ考えています。私の周囲を見ても記憶力が高い人は総じて集中力も高いことが多いです。そして逆もまたしかり。集中力が高い人は記憶力も高いということが成り立つといえるでしょう。これらの反対のパターン、つまり記憶力が高いのに集中力が低く、集中力が高くても記憶力が低いという人はなかなかイメージすることは困難です。

なぜ集中力と記憶力にそれほど相関があるのかといえば、そもそも何かを記憶するためには集中力の助けが必要だからです。記憶力を高める原則の1つに「意志」というものがあります。意志とは当然ながら何かを覚えようとする意志のことです。この意志が働いていないと脳の記憶のスイッチは入らない仕組みになっています。

考えてもみてください。単にテキストだけを眺めていても内容を記憶することはできません。「ここは大事な箇所だから覚えよう」という意志が働くからこそ覚えることができるのです。

では、このときの覚えようという意志とはいったいなんなのでしょう。これを言い換えると「やる気」と言うことができると思います。覚えようとするやる気が発生してはじめて頭の中に情報を入れる準備ができるというわけなのです。しかし、一概にやる気と言ってもこれまた漠然とした概念です。ところが、脳科学的にはこのやる気というものも、どういうメカニズムで働くのかはすでに解明されているのです。

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