名古屋の味噌カツ「矢場とん」が串で勝負する訳 コロナ禍で攻める名古屋の外食チェーンの現在
“名古屋めし”と呼ばれるご当地グルメが注目を集め、近年は観光コンテンツとしても人気を博してきた名古屋の外食シーン。しかし、コロナショックによってとりわけ大きな被害を受けた業界がまさに「外食」と「観光」だ。
この未曽有の危機に、各社はどんな取り組みをしてきたのか。前編の「名古屋のスガキヤが『移動販売』を始めた事情」に続いて、名古屋めしを代表する外食企業の動向と取り組みをレポートする。
味噌カツチェーンは居酒屋スタイルの新業態を開発
観光コンテンツとしての「名古屋めし」人気を牽引してきたのが味噌カツ(以後、同店の表記にならって「みそかつ」)の「矢場とん」だ。創業昭和22年の老舗にして、2000年以降は次々と店舗を増やし、東京や大阪など全国各地にも進出。全27店舗を直営出店し、2019年のグループ全体の集客260万人以上、総売り上げは約41億円に上る。
連日観光客で大行列ができるほどの大人気を博していただけに、コロナショックの影響も大きかった。愛知県に緊急事態宣言が出された4、5月は客足がパタリと途絶え、例年の3割程度にまで売り上げは激減した。
対するテコ入れ策の第1はテイクアウト、通販商品だ。もともと取り扱いがありながらPRはほぼ手付かずだったところ、5月初旬から商品ラインナップやHPでの告知を強化。
店舗ではあまり出ない串かつをメインにすえたことも家飲み需要にマッチし、以前は月2ケタにすぎなかった注文が5月には前年の10倍の600セット以上に。以後、継続的に月1000セット前後と安定した人気を獲得しつつある。
10月には「昔の矢場とん」をオープンした。通常のみそかつは扱わず、通販でも好評を博している「みそ串かつ」を目玉メニューとする居酒屋スタイルの新業態。コロナショックが最も厳しかった今年4月に物件の話が舞い込み、急きょ開発を進めた、まさにコロナ禍の逆風に真っ向から立ち向かう果敢なチャレンジ精神の賜物だ。
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