名古屋の味噌カツ「矢場とん」が串で勝負する訳 コロナ禍で攻める名古屋の外食チェーンの現在

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ランチ営業にも乗り出した。やはり中心部をはじめとする6店舗で開始し、多い日は1店舗約40名を集客。現在は3店舗で引き続きランチ営業を行っている。

通販商品は冷凍の手羽先やスナック類などもともと充実していて、これが家飲み需要の高まりで活発に動いた。6~9月の月間平均出数は約460セット。これは前年と比べて実に1.5倍にあたる。

キャラクターの鳥男が目印で街中でもひときわ目立つ(写真:筆者撮影)

宅配需要に応えるためにウーバーイーツとも契約。メニューに生ものや汁物が少ないので多くのメニューがテイクアウトに対応しやすい。外出自粛が叫ばれていた時期は、店舗への予約はほとんどなくなってしまったが、テイクアウトの注文にかなり助けられたという。

このように打てる手をコツコツと打って苦境に対応してきた。10月時点では売り上げは前年同期比で6割。依然厳しい状態は続くが、少しずつ回復の兆しは表れ、営業状況はほぼ平時に戻している。

カギとなるのは「地元ファン」

新型コロナウイルス感染再拡大への備えについては、現時点では具体化はしていないが、「春の経験値を生かして臨機応変に対応する」(同社担当者)という。当面インバウンド需要の回復は見込めない中、ランチや宅配などの手軽さで近隣のユーザーをつなぎとめながら、もともとの地元のファンを中心に客足の戻りを期待していく。

名古屋めしはもともと地元で親しまれてきたもので、観光コンテンツとして脚光を浴びるようになったのはここ10年ほどのこと。観光客を数多く獲得してきた企業ほどコロナショックによる客数減は大きかったが、この失われた客数は元をただせばこの10年の間に新たに上乗せされてきた需要ともいえる。

今回取材した各社の取り組みも、根底にあるのは地域の顧客の心を今一度つかむこと。名古屋めしの最大のセールスポイントは、名古屋人に愛されてきた真のご当地グルメであることにある。この原点回帰が実を結んだブランドほど、コロナショックからの立ち直りも早く、また確実なものとなっていくのではないだろうか。

大竹 敏之 名古屋在住ライター

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おおたけ としゆき / Otake Toshiyuki

名古屋在住のフリーライター。新聞、雑誌、Webなどに名古屋情報を発信する。
『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店完全版』(ともにリベラル社)『なごやじまん』(ぴあ)など名古屋の食や文化に関する著作多数。
Yahoo!ニュースに「大竹敏之のでら名古屋通信」を配信中。

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