「寺門ジモン監督」が語る食と人生と焼肉の哲学 「フード・ラック!食運」実現した人間力と探究心

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映画監督もそうなんです。現場でも、なんで演技について言ってくれないんだろうと思う役者さんもいたけど、「それは言うことじゃないです」と言っていた。そういう意味では逆に厳しかったのかもしれません。

セリフを覚えていない人は現場に来ないでくださいという空気が伝わっているんだよね。これはダチョウ倶楽部でやってきたことだから。現場に入る前にセリフを入れてくるのは当たり前じゃないかと。僕は舞台稽古のときに台本は頭に入っています、入ってないと失礼だし、演技というのはそこからの話ですから。商業映画の監督をやったのは初めてでしたが、そういうのも含めた上での経験値があったんですね。

本当の趣味は研究、探求、気づき

――ジモンさんの趣味は本当に多方面に広がっていますが、ジモンさんにとっての「好き」って何ですか。

研究、探求、気づきですね。気づきこそ命。人に気づかれないことを発見できる。何とか細胞を発見する先生とかとまったく同じ感性だと思います。お笑い芸人がこんなこと言ったら笑われるでしょうけど(笑)。

雪のなかに入っていて、1回も日光を浴びていない山菜がおいしいというのを見つけた瞬間がうれしいわけです。今日出会うご飯がおいしいか、おいしくないかって一期一会じゃないですか。季節、季節で変わるものだから毎日発見できるんです。

これはいつも言うんだけど「外を出た瞬間に雲を見なさい」と。毎日のルーティンがない人間に気づきはないんだと。ちゃんと同じ、決めた時間にランニングすると、自分の体の調子がわかる。景色を見て、今日はどんよりしているなとか。いつもと違うなと感じる。自分の決められた規則のような、きちっとしたものがないと駄目なんです。

寺門ジモン(てらかど・じもん)/1962年生まれ。肥後克広、寺門ジモン、上島竜兵によるお笑いトリオ「ダチョウ倶楽部」のメンバー。1987年、第5回日本放送演芸大賞・ホープ賞を受賞し、1993年には「聞いてないよォ」で流行語大賞大衆部門 銀賞を獲得するなど、3人の息の合った芸風で一世を風靡する。バラエティ番組などで活躍する一方、グルメ好きが高じ、数々のグルメ番組に出演。食に関する書籍の出版、百貨店やイベントのプロデュースも手掛けており、芸能界屈指の食通として知られている。中でも、焼肉に強いこだわりを持ち、「家畜商」の免許を取得、2012年からは松阪市ブランド大使としても活動中。本作品が映画監督初作品となる(撮影:今井 康一)

――これからの時代、教育などの分野でも、探求力をいかに鍛えるかというのが求められています。

それこそ「ジモンに聞け」ですよ。これはもう趣味ですよね。いろいろとやっていますが、本当の趣味は探求力です。もう僕は探求力しかないんです。異常なほどです。突き抜けて変人と言われることはうれしいことですからね。

日本では、人と違うとか、変わってると言われることはまずいと言われますよね。でも(ダチョウ倶楽部の)竜ちゃん、肥後ちゃんと出て、「あいつだけちょっと変だ」と言われるのは僕にとってはうれしいことなんです。だから僕は早くから自分に色をつけた。ジモンはこういう人だということで損することもあったけど、得することも多かったんですよ。

――それで映画まで撮れたわけですからね。

肉が好きで、食べ物が好きで、それで映画まで撮れたなんていう人はなかなかいないので。それは本当にうれしいなと思いますね。

(文中一部敬称略)

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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