「お酒のカロリーでは太らない」医学的な根拠 ビールより「糖質ゼロ」のほうが油断ならない

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先にも触れたが、「お酒は太る」とされるのは、実は「お酒よりもおつまみのせい」といった話もよく耳にする。

「お酒を飲むとこってりした、塩辛いものが食べたくなる」とか、「締めにラーメンが食べたくなる」という人も多いだろう。これは気のせいなどではないらしい。アメリカの大学生を対象にした調査でも、飲酒後には塩辛いおつまみやピザなどを好み、飲んでいない日よりも野菜や豆などの健康的な食品を摂らない傾向が見られた。

しょっぱいもの、つまり塩分(ナトリウム)が欲しくなるのは、2つの原因が考えられる。

従来の説は、お酒を飲んでいるとトイレが近くなり、尿と一緒にナトリウムなどの電解質が失われるため、というものだ。アルコールは、「バソプレシン」という抗利尿ホルモンの分泌を妨げる。バソプレシンは、体内の水分を適度に保つよう尿量を調節しており、その分泌が抑えられると必要以上の尿が作られてしまう。

もう1つの説は、アルコールを摂ると、体内水分量とは無関係に「喉が渇いた」という感覚が生じ、必要以上の水分を摂ってしまうため、というものだ。体液が薄まって電解質バランスが崩れ、体が塩分を欲する。近年の研究で、喉の渇きを誘発する「FGF21」と呼ばれるホルモンの分泌が、アルコールによって促されることがわかってきた。

お酒を飲んでいてしょっぱいものが食べたくなったら、カロリーの高い唐揚げやフライドポテトはやめておこう。代わりに野菜の浅漬けや大根のおでんくらいがいいかもしれない。

 “締め”のラーメンはなぜあんなにおいしいのか?

「飲んだ後の締めのラーメンがやめられない」のは、肝臓(肝細胞)でのアルコール分解にエネルギーが使われ、急激に血糖値(血中のブドウ糖)が低下するからだ。

エネルギー源となるブドウ糖は、食事に含まれる炭水化物から消化作用で取り出されるか、肝臓に蓄えられたグリコーゲンから合成(糖新生)される。ところが、アルコールは人体にとっては毒に等しいので、体は糖代謝よりアルコール分解を優先する。その結果、消化作用も、糖新生も遅滞してしまう。

血中のブドウ糖が減ると、脳は「糖の補給が必要」と判断し、空腹感を生じさせる。こうして「締めのラーメン」が欲しくなる、というわけだ。もちろん、これはちょっとしたタイミングのずれで、実際にはお酒を飲みつつ食事から炭水化物を摂っているし、後から肝臓での糖新生も追いついてくる。

それなのに「締めのラーメン」を食べてしまうと、アルコール分解が一気に進みすぎる。その先のアセトアルデヒド分解が追い付かず、頭痛や吐き気といった悪酔いや二日酔いの原因になる。もちろん、糖質の摂りすぎにもなり、結果として肥満を招きやすくなる。

見方を変えれば、アルコールには食欲増進効果があり、食前酒をたしなむのは理にかなっているとは言えるが……。

お酒に“飲まれる”と、理性のコントロールは緩んでしまう。飲みすぎたり、余分なラーメンを食べてしまったりするかもしれない。誘惑に負けた翌朝は、胃への負担の少ない消化のいいものを少し食べて、適度に体を動かしながら、大いに反省しよう(自戒)。

久住 英二 内科医・血液専門医

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くすみ えいじ / Eiji Kusumi

1999年新潟大学医学部卒業。内科医、とくに血液内科と旅行医学が専門。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。

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