「お酒のカロリーでは太らない」医学的な根拠 ビールより「糖質ゼロ」のほうが油断ならない

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純粋なアルコールのカロリーは、7.1kcal/g(1kcal=水1000ccを1℃上昇させる熱量)とされている。1973年にFAO/WHO合同特別専門委員会が示した数値で、今日まで世界中で採用されてきた。

一般に糖質やタンパク質は4kcal/g、脂質は9kcal/gとされているから、なかなかの数値だ。例えばビール1缶分のアルコールは14g、単純計算で約100kcal(コンビニのおにぎり約0.5個分)に相当する。飲みすぎれば太るのも当然とも思える。

一方で、どこかで「アルコールのカロリーはすぐ消費されるから太らない」という話を聞いたことがないだろうか? 

アルコールを摂取すると、1~2時間のうちに胃や小腸で吸収され、肝臓~筋肉・臓器で分解される。その中間生成物である酢酸が、筋肉などで最終的に炭酸ガスと水に分解されるときに、熱エネルギー7.1kcal/gを放出する。これがアルコールのカロリーの正体だ。

ポイントは、酢酸が「短鎖脂肪酸」ということかもしれない。短鎖脂肪酸は、近年「体に脂肪がつきにくい」健康オイルとして注目の中鎖脂肪酸(MCTオイル)よりも、さらに分解されやすい脂肪酸である。体内で優先して使われるので、「太らない」と言われるのだろう。しかし、長鎖脂肪酸よりは消費されやすいかもしれないが、短鎖脂肪酸もエネルギーを有し、摂ればとっただけエネルギー摂取過多になる。

しかも、実際の酒類ではアルコール度数だけでなく、含まれる糖質の量がカロリーに大きな影響を与えている。酒類によって“1杯”の量(提供単位)も異なる。

ビール派のほうがワイン派より分が悪い、意外な理由

酒類ごとの違いを見てみよう。

文科省の食品成分データベースによれば、ビール1缶(350ml)には11~12gの糖質が含まれ、アルコール由来と合計で150kcal前後にはなる。150kcalと言えば、体重60㎏の人が10分間、階段を駆け上がり続けてやっと消費できるだけの熱量だ(基礎代謝を除く、厚労省『実践的指導実施者研修教材』より計算)。

これがワインだと、小グラス1杯(118ml)でアルコール11g程度(約80kcal)、糖質2~5g弱にとどまり、合計でも90~100kcal程度に収まる。カロリーだけ見ると、ビールよりワインのほうが「太りにくい」ように見える。実際、英国の健康な高齢男性3000人を対象にした調査では、ビールよりワインのほうが太りにくかった。

ビール愛好家への福音として、実験的研究のレビューでは、ビールの太りやすさは否定されている。被験者に数週間、毎日ビールあるいはワインを飲んでもらったところ、いずれも1~2缶/杯程度であれば体重や体脂肪率に大きな変化はなかった。

ただし、ビールには別の問題があるようだ。欧米で実施された複数の研究で、ワイン愛飲者と比べ、ビール愛飲者には太りやすいライフスタイルの傾向が見られた。野菜や果物の摂取が少なく、油脂類や加工食品が多いなど食生活が貧しく、また、運動量が少なかった。これが日本人に当てはまるかは検証が必要だが、同様の傾向があるように感じる。

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