バイデン新政権で台湾が受ける政治経済的影響 台湾の国際的経済連携協定への加入が進むか
一方、フォックスコン創業者であるテリー・ゴウ(郭台銘)氏は「アメリカ連邦、州、地方の政策立案者がフォックスコンに真摯に対応してくれさえすれば、われわれもウィスコンシン州におけるプロジェクトの完成と投資の拡大を真摯に約束する」という声明を発表している。
2019年末までに、フォックスコンはウィスコンシン州で520人以上の雇用を達成しており、さらに現地に7.5億米ドル(約787億円)を投資した。うち5億米ドル(約524億円)は、フォックスコンの北米での本拠地「ウィスコンシン・バレー科学技術パーク」の建設に投じられている。
台湾ハイテク企業のアメリカでの待遇に変化はない
ウィスコンシン州がフォックスコンの補助金申請を却下したという報道もあったが、同州では依然として失業率の大幅な改善が見られない状況であるため、政権交代後もフォックスコンが撤退させられることはないと経済アナリストは指摘している。ただ、バイデン政権がフォックスコンへの投資規模を縮小させる可能性はあり、今後も注視が必要である。
三つ目に、米中貿易戦争が終わることはなく、バイデン政権での脱中国化は失速するかもしれない。トランプ政権下で激化した米中貿易戦争で、アメリカはサプライチェーン(製品供給網)から中国を排除し、世界中でサプライチェーンの脱中国化を進めた。
バイデン政権ではこの中国への強硬政策がどうなるのかも関心の的であるが、いくらバイデン氏が多国間主義であるからといって、米中貿易戦争が早期に終了することはない。科学技術先進国であるアメリカは、半導体や5Gなどハイテク分野における中国の技術力が、すでにアメリカの脅威になっていることを察知しているからだ。
しかし、米中貿易摩擦がこれ以上悪化することもないだろう。バイデン氏のチームはアメリカと中国が科学技術力を競うために、中国を敵視するのではなく「アメリカの力を強めること」で対抗すべきとしているからである。今後、アメリカの対中政策はトランプ政権のような「制裁」ではなく、オバマ政権のような「牽制」へとシフトすると見られる。したがって、トランプ政権下で進められた脱中国化は失速するだろう。
ここでアメリカの脱中国化が弱まれば、「親米=反中」とは言えない状況が発生する。つまり台湾企業はリスク分散と生産効率の両方を考慮した「柔軟性のあるサプライチェーンの構築」という戦略をとることが可能になるのだ。バイデン政権の対中路線は、台湾ハイテク産業のグローバル展開に有利に働くことになるはずだ。
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