バイデン新政権で台湾が受ける政治経済的影響 台湾の国際的経済連携協定への加入が進むか

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4つ目は、アメリカの量的緩和政策で今後も台湾ドル高が続くというものだ。今後、アメリカ議会は上院と下院で多数派が異なる「ねじれ」状態になる見通しだ。そのためアメリカは新型コロナウイルス流行による経済のダメージの緩和のために、貨幣政策に頼らざるをえないだろう。

コロナ禍で発動したアメリカの量的緩和政策は、今後2~3年は続くと予測される。量的緩和政策の継続にともない各通貨の対米ドルレートの上昇傾向は維持され、台湾ドル高もしばらく続くと見られる。

また為替問題の観点から見ると、バイデン氏はアメリカ財務省による「為替操作国」の3つの基準も支持するものと見られる。為替操作国とはアメリカが認定する自国の利益のために相場を不当操作する国を指すが、その認定基準は過去4四半期 を対象に「対米黒字額が200億ドル以上」「経常黒字額が対GDP比で2%以上 」「為替市場に一方的に介入し続けていること」だ。台湾の中央銀行は為替介入の際は為替操作国認定を防ぐため慎重に動いているため、やはり台湾ドルの上昇の趨勢は変わらないだろう。

台湾の株式市場が活況を見せる

5つ目に、市場への余剰資金が流れ込み、企業が増益を果たす中で台湾の株式市場は活況を見せる可能性がある。バイデン政権での量的緩和政策の維持は、引き続き台湾株式市場への余剰資金の流れ込むことを意味する。加えて、半導体産業の増益、アメリカの脱中国路線からの離脱による米中貿易戦争の緩和は台湾株の続伸に寄与するだろう。

ただ、今回の大統領選はバイデン氏が当選を確実とした以降もすっきりしない状況が続いている。極めて短期的に見た場合、台湾株も国際市場の動静にそって揺れるだろう。だが中長期的に見ると、上院と下院のねじれ状態が続けば、株式市場に影響を与えるような極端な政策決定がされる可能性は低く、懸念する必要はないと考えられる。台湾株も中長期的に買い越しが続くと見られている。

ドイツ保険大手アリアンツグループ系の安聯台灣科技ファンドの廖哲宏マネージャーによると、台湾政府等が発表したデータでは経済は好転しており、半導体分野で部品の供給不足が依然として続く中、ファウンドリーと半導体装置産業とIC設計産業は台湾の主力産業であり続けるという。さらに廖マネージャーは、iPhone12の生産量が従来より増加すると見ており、サプライチェーンの株価には注視が必要、またiPhone12の成功は5Gのインフラ整備を加速させ、関連銘柄は時間差で徐々に回復すると見ているそうだ。

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