バイデン新政権で台湾が受ける政治経済的影響 台湾の国際的経済連携協定への加入が進むか

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ブルームバーグのアナリストも、バイデン政権への交代後、米中貿易戦争は緩和による関税の引き下げにより石油化学関連輸出業者が利益を得ると予想している。台湾企業では台湾プラスチック(台塑)、南亜プラスチック(南亞塑膠)、フォルモサケミカルズ&ファイバー(台化)がその恩恵にあずかると予想した。

総じていえば、アメリカ大統領選の不確定要素が台湾にはかえってプラスに働いていると言える。

台湾の経済回復と企業の収益が堅調であるなか、11月の台湾株は小動きを脱する可能性が高く、基本的には産業の成長に支えられて、大統領選終了後の株式市場の動きには期待が持てるだろう。だが新型コロナウイルス流行の再爆発という「変数」には留意が必要だ。

台湾総統の祝賀電話をバイデンは受けるか

6つ目は、台湾の蔡英文総統の祝賀電話を受けるかどうかで、今後の米台関係を占う試金石となりそうだ。トランプ政権は台湾に対し友好的な政策をとってきた。例えば米台の高級官僚の相互往来を促進する「台湾旅行法」、中国脅威に対抗することを目的とした「アジア再保証推進法」、台湾の外交的孤立を防ぐことを目的した「台北法案」、台湾を支持し台湾の防衛費増額を求める『台湾保証法案』などが挙げられる。

これらの法案は米台関係の強化を示す証だ。しかもここ数年、アメリカ在台湾協会(AIT、大使館に相当)による台湾の離島訪問などの取り組みも評価されてきた。これらの活動はアメリカと台湾の市民同士のつながりを深め、アメリカ世論における台湾への支持を広げ、ひいては米台間の取り決めをさらに具体化させるだろう。

台湾人にとって、アメリカと台湾との友好関係がどう進むかは気がかりだ。前回の大統領選でトランプ大統領は蔡英文総統からの祝辞の電話を受け、北京の中国政府をいら立たせた。

今回の大統領選前に、バイデン氏は台湾のことをアメリカの親密なパートナーとしたが、バイデン氏は蔡総統からの祝辞電話を受けるのだろうか。バイデン氏が電話を受けるかどうかが、今後も米台の対話が続くかどうかの重要な指標になると言える。

また現職のAIT所長(大使に相当)は2021年に任期を終える。実質的な大使館であるAITは、アメリカ大統領や政府機関の意向に沿い台湾での各種計画を進める役割を持つ機関だ。そのためバイデン氏と蔡総統の電話会談が実現するかどうかは次期AIT所長の人事を、ひいてはバイデン政権の台湾への態度を占う試金石となるだろう。

(台湾「今周刊」2020年11月7日)

台湾『今周刊』
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