ブレア元英首相に学ぶ、超一流の「聴き方」 田坂広志 多摩大学大学院教授に聞く(2)

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仕草で分かる「細やかな感受性」

――なぜ、田坂教授は、ブレアの話術から、その「細やかな感受性」を感じるのですか?

それは、スピーチやパネル討論の最中の彼の表情を見ていると分かります。
 特に、パネル討論では、ブレア以外のパネリストが発言している最中のブレアの表情や仕草が、彼の内面的な心の動きを如実に示しています。
 例えば、誰かの発言の最中に、聴衆の反応を細やかに観察しています。
 自分の発言の場面では、実に流麗かつ雄弁に語りますが、その発言が終わった後にコップに手を伸ばして水を飲むとき、その仕草から伝わってくるのは、「神経質」とでも呼ぶべき雰囲気です。
 また、相手の話を聴いているときに椅子の肘掛に伸ばしている手の先で、指を震えるように動かす仕草。それは、会場の空気と雰囲気の変化に集中し、次に自分が語るべき言葉を考えているときの仕草です。
 このように、ブレアの話術の神髄は、実は、その流麗さ、雄弁さだけでなく、「細やかな感受性」で、聴衆の「無言の声」に耳を傾ける力なのです。

「言い換え」と「畳み掛け」の技術

――その「無言の声」に耳を傾ける力を身につけると、具体的には、話術の何が変わるのでしょうか?

「無言の声」に耳を傾けることは、話術のプロフェッショナルとして腕を磨いていくときの基本です。
 そして、この基本を身につけると、まず、「言い換え」や「畳み掛け」の技術を身につけることができます。

――「言い換え」とは、どのような技術でしょうか?

例えば、聴衆に対してある言葉を語ります。そのとき、聴衆の中から「いまの言葉の意味が分からない」という無言の反応が返ってくるときがあります。それは、聴衆の表情を見ているとすぐに分かります。
 そして、その瞬間、その言葉を、分かりやすい言葉で言い換えるのが、「言い換え」の技術です。
 例えば、

「人生においては、『邂逅』が大切ですね・・・」
 「そう、『出会い』ということですね・・・」

そうした技術です。

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