ブレア元英首相に学ぶ、超一流の「聴き方」 田坂広志 多摩大学大学院教授に聞く(2)
――では、「畳み掛け」とは、どのような技術でしょうか?
例えば、聴衆に対してあるメッセージを語ります。そのとき、聴衆から「その通りだ!」との強い共感の雰囲気が伝わってくることがあります。その瞬間、そのメッセージを畳み掛けるように繰り返す技術です。
例えば、
「結局、人生とは、どのような邂逅が与えられたか、
どのような人間との出会いが与えられたか、それがすべてなのですね・・・」
「そう、邂逅、出会い、縁、それがすべてなのですね・・・」
こうした、「言い換え」「畳み掛け」などは、プロフェッショナルの話術としては、初級課程と呼ぶべき基本的な技術ですが、そもそも、聴衆の「無言の声」に耳を傾けることができなければ、この技術の段階に進むこともできません。
「間」のコントロール
――では、「無言の声」に耳を傾けることができるようになると、「言い換え」や「畳み掛け」以外に、さらに、何ができるようになるのでしょうか?
この「無言の声」に耳を傾けることができるようになると、聴衆との「無言の対話」を行なえるようになります。
そもそも、スピーチとは、話者から聴衆への「一方通行のメッセージ伝達」ではありません。スピーチとは、会場の聴衆との「無言の対話」なのです。
見た目は、話者が聴衆に対して一方的に語っているように見えます。しかし、実際には、聴衆が「無言の声」を発し、話者は、その声に耳を傾け、言葉を選び、発しています。
それは、まさに「無言の対話」と呼ぶべきコミュニケーションなのです。