ブレア元英首相に学ぶ、超一流の「聴き方」

田坂広志 多摩大学大学院教授に聞く(2)

――なぜ、トニー・ブレアは、そうしたスピーチができるのでしょうか? やはり、彼の「語り方」や「言葉の選び方」が、並外れて優れているからでしょうか?

たしかに、彼の「語り方」や「言葉の選び方」は見事ですが、実は、彼の話術の秘密は、それだけではないのです。
 おそらく、彼の「語り方」を学んだだけでは、あの「話術」の秘密は、決して理解できないでしょう。
 実は、トニー・ブレアから学ぶべきは、「語り方」だけではなく、その逆の能力なのです。

すなわち、「聴き方」。

それをこそ、彼から、学ぶべきでしょう。
 「聴衆に対して何を語るか」だけでなく、「聴衆から何を聴くか」。
 その技術をこそ、トニー・ブレアから学ぶべきでしょう。

「無言の声」を聴く力

田坂 広志 たさか ひろし 世界経済フォーラム(ダボス会議)Global Agenda Councilメンバー。多摩大学大学院教授。
1974年東京大学工学部卒業。81年東京大学大学院修了。工学博士(原子力工学)。米国シンクタンクBattelle Memorial Institute客員研究員などを経て 日本総合研究所の設立に参画。取締役・創発戦略センター所長等を歴任。現在、同研究所フェロー。 2000年多摩大学大学院教授に就任。同年、21世紀の社会システムのパラダイム転換をめざす、シンクタンク・ソフィアバンクを設立、代表に就任。08年にダボス会議を主催するWorld Economic ForumのGlobal Agenda Councilのメンバーに就任、09年からTEDsterとしてTED会議に毎年参加。 11年には東日本大震災と福島原発事故の発生に伴い、内閣官房参与に就任。総理大臣の特別顧問として、原発事故対策、原子力行政改革、エネルギー政策転換に取り組む。 昨年は全国から1000名の経営者やリーダーが集まり、「変革の知性」を学ぶ場、「田坂塾」を開塾(撮影:大澤 誠)

――「聴き方」ですか・・・?  しかし、「聴衆から何を聴くか」と言われますが、聴衆は、黙って話者の話を聴いているので、何かの言葉やメッセージを発しているわけではないのでは・・・。

いえ、そうではありません。
 実は、講演やパネル討論において、注意深く会場を見ていると、聴衆は、「無言の声」や「無言のメッセージ」を発しているのです。
 だから、数多くの講演やパネル討論を経験し、話者として修業を重ねていくと、いつか、この「無言の声」や「無言のメッセージ」が聞こえてくるようになります。
 そして、それが聞こえてくるようになったとき、我々は、話者として、本当のプロフェッショナルの世界に足を踏み入れるのですね。
 逆に言えば、話者として「聴衆に対して何を語るか」を腐心している段階は、まだ、本当のプロフェッショナルではないのです。この「聴衆の無言の声にどう耳を傾けるか」を考え始めたとき、我々は、本当のプロフェッショナルの世界に足を踏み入れるのです。

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