「開拓性」遺伝子型の人とそうでない人がいる訳 ゲノム解析から見た人類の多様性とその未来
GAFAをはじめとして、世界的に生命科学研究への投資が行われていますが、日本においては、根深い問題があります。まず日本は、生命科学だけでなく、科学論文の本数そのものが、先進国の中で唯一減り続けている国です。研究費の公的資金が少ないという問題もあり、博士人材も減っていますし、文部科学省によると2019年の大学院の博士課程学生数は、2003年の約半分まで減りました。
そして、日本ではダブルメジャー(複数専攻)ができません。アメリカでは、Ph.D兼MBAという人が多いのですが、日本には、ビジネスができて、なおかつサイエンスもわかるという人材が少ないのです。
ここを乗り越えていくためには、研究資金を増やすことなど長期的な方法はありますが、私はまず、異分野の多様な人材を融合させたチームを組むことだと思います。例えば、Ph.D兼MBAという人材が少なくても、ビジネスの人と研究者とがチームを組んで1つの課題に取り組むことはできます。
実際にそのような動きが起きてもいます。例えば、京都大学は、大学内の研究者の発表会で、ビジネスマンをマッチングして京大研究シーズの事業化を目指す取り組みを行っています。
また、武田薬品工業は、湘南の研究所をライフサイエンス系のベンチャーや研究室に開放して、イノベーションが起こるような街づくりを行っていて、弊社もそこで、ヘルスケアや保険、製薬などの会社とチームになって、周産期のうつ病への取り組みに参画しています。
多様な人材を集めて、1つの社会課題に取り組むというイベントは、現状の日本において、すぐにできることだと思います。
変化を怖がることは「種」として正しい
変化というと、変わった部分だけが注目されがちですが、ほとんどの変化は全体としてはグラデーションになっていて、一気にすべてが変わるということはありません。
「私は120年も生きたくない」と言う人はいますが、現在平均寿命が80歳台であるのも、1950年頃には50歳台だったところから徐々に延びてきたものです。今後も徐々に年月をかけて延びていくものであって、急に120歳にはなりませんから、恐れるほど変わることはありません。
松尾芭蕉が「不易流行」と言っていますが、変わらないものと、流行によって変わるもの、その両方が混ざり合うものだと捉えて、全体像を見るほうがいいでしょう。
それから、変化することに対して好意的な性格の人と、そうではない性格の人が、1つの集団の中に存在するということそのものが、実は全体の種としての生存の可能性を上げていると考えることもできます。
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