老舗「ヤシカ」復活に見るブランドビジネスの新世紀--連敗・電機業界の新たな切り札となるか
パイオニアのテレビも中国家電量販の手で復活
パイオニア自身は巨額の赤字を生んだプラズマテレビ事業からすでに撤退しているが、中国においてパイオニアは今でも「先鋒」という名で親しまれ、高画質・高音質のハイエンドAVブランドとして認知されている。
このブランドを冠したテレビが自社店舗だけで排他的に販売できるとなれば、蘇寧にとっては他社店舗との大きな差別化につながる。またパイオニアも、蘇寧から受け取る商標権ロイヤルティを契約期間の5年間で数億円、また関連したAV機器売上高を12年に100億円と見込んでいる。
また米国では、インスタント写真で有名なポラロイド(連邦破産法第11条を適用申請)を、動産の評価や売却を手掛ける金融関連企業のゴードン・ブラザーズなど2社が買収。この2社が、画像関連製品のデザイン等を手掛ける別の企業にポラロイドブランドを供与。同ブランドを冠した製品は、日本を含む世界各国ですでに販売開始されている。
ポラロイドは主要国消費者の間での認知率が100%近いという、驚異的な知名度を誇るブランド。ゴードンなど2社は、このブランド力の資産価値は商標権などバランスシートに計上された数字だけでは計り知れないと判断し、買収に踏み切ったという。
こうした新しいビジネスモデルで活用されるのは、事業や企業として競争を勝ち抜けなかったブランド。このため、継続する事業への影響を考えて、ブランドの譲渡や供与に後ろ向きな企業が日本ではまだ大半だ。
エグゼモードの藤岡社長も、「ヤシカに行き着くまでに、国内電機メーカーに撤退事業のブランド供与を片っ端から打診したが、すべてけんもほろろに断られた」と話す。だが実は、このブランドこそが、こと日本の電機産業にとっては、手つかずの“カネのなる木”なのではないか。