老舗「ヤシカ」復活に見るブランドビジネスの新世紀--連敗・電機業界の新たな切り札となるか
ヤシカブランドのカメラの世界販売台数は、京セラが商標権を売却した当時は年75万台だったのが、現在は150万台に倍増。さらに中国の電子機器受託製造企業1社も商標権使用を希望しており、これが実現すれば、巨大な中国市場が新たに加わることになる。
「ヤシカブランドのビジネスがこれほど広がるとは思わなかった」とデイタムの赤崎盛裕マネジングディレクターは話す。
赤崎氏は元京セラの営業マン。香港駐在時にカメラ事業撤退を決めた本社に対し、「ヤシカの商標権は売れるのではないか」と提案し、売却交渉に当たった張本人だ。
ただ、ヤシカを買った企業がどんなビジネスを展開できるのか、初めから明確な構想があったわけではない。現在のモデルは、売却が成立した後、誘われる形でデイタムに転職し手探りでたどり着いたものだ。
ロイヤルティ収入はすでにのれん償却代以上
デイタムが供与先企業から1年間に受け取るロイヤルティ収入は、すでにヤシカ買収で発生した毎年ののれん償却費用を上回っており、投資の果実を早くも味わっている。
今後はインドでヤシカを展開してくれる企業を探したいと言い、「商標権取得に投下した資本以上の利益を生めるようになれば、ブランド価値の向上も見込め、将来的に権利を再売却することも選択肢として上がるかもしれない」と赤崎氏は語る。
ロイヤルティを払う側のエグゼモードにとっても、うまみは多い。ヤシカを冠したことで、従来の自社ブランドには冷ややかだった大手量販店も関心を持ってくれるようになった。