財政改革は待ったなし 近づく破綻の足音、国債増発以外の再建策が焦眉の急
膨大な需給ギャップ デフレ悪循環に突入
下図の貯蓄投資バランスに見るように、家計は一貫して貯蓄超過だが、98年以降は企業も貯蓄超過に転じ、政府部門の赤字を「補填」する形になった。財政出動は、成長性を高めるような産業構造の転換に生かされずに慢性化。これに伴い、経済成長率は低空飛行が続く。
中期財政フレーム策定へ向けた検討会のメンバーでもある富田俊基中央大学法学部教授は「98年にGDPを債務残高が上回った時点で構造的な悪化に陥っている」と指摘。また、「97年の山一証券破綻以降の倒産やリストラで、人々が将来に不安を抱くようになった」と話す。
05~07年の回復が輸出主導だったために、今回の危機では先進国中で最も深刻な景気後退に見舞われた。
今や需給ギャップは実に30兆円を超える規模。日本はデフレの構造にしっかりと絡め取られてしまい、脱却するのは容易ではない。景気の循環的な回復を展望している欧米に対して、少子高齢化を背景に将来の成長期待は低下し、ますます出口戦略が語れなくなっている。
財政出動は財政が健全なら経済浮揚効果を持つが、現状のように財政悪化が限度を超えると、むしろ人々が増税や福祉の切り捨てなど将来に対して不安を抱くため、逆効果となる。日本はまさに今、この状態にある。若年層は雇用に対する不安を抱き、金融資産を持っている高齢者も年金の受給や介護費用に懸念を持つため、おカネを使えない。消費が落ち込み景気はますます悪化する。