財政改革は待ったなし 近づく破綻の足音、国債増発以外の再建策が焦眉の急
無為なバラまきより内需拡大策が必要
一方で「パソコンや電気製品をたくさん作って輸出するだけではいつまで経っても価格が下がり、デフレの構造を脱却できない」と、ニッセイ基礎研究所の櫨浩一経済調査部長は指摘する。「内需がないというが、介護や医療などいま必要な商品やサービスが提供できていない。今後(政府の)成長戦略はそうしたニーズに応えることを柱にするべきだ」。
バラまいても貯蓄に回ってしまう子ども手当に5兆円超も支出することに拘泥し、雇用拡大の促進につながる保育所の整備になぜ回さないのかと誰しも思うだろう。
こうした中、中期財政フレームで再建のシナリオを示せるのか。前述の富田教授は「過去の失敗を踏まえて、実現可能性のあるものにしなければならない」と話す。90年代以降、財政再建の提言やプランはことごとく無に帰してきた。過去の失敗とは「つねに楽観的な経済見通しを前提にしてきたこと、特殊法人改革など組織をいじるだけで何とかなると考え、実際の歳出削減となると、総論賛成、各論反対に終わってきたこと」(富田教授)だ。
となると、年平均3%の名目成長率という民主党政権の掲げる目標は、財政再建の前提には、すべきでない。富田教授は「長期的な視野で社会保障給付、年金保険料、税の受け払い、所得水準の捕捉を一体的に行うプランが必要。これを視野に、3年間の中期目標を作る」とする。
プライマリーバランスの実現は当然として、日本の場合、名目成長率がプラスに転じても長期金利がそれ以上上昇すると、債務残高がGDPを上回っているため、国債利払い拡大から財政が一段と悪化してしまう。政府には必要最低限の社会保障を確保し、デフレを脱却して成長軌道に復帰させ、かつ、財政支出の削減と税収の増加を図るという困難な課題が突きつけられている。針に糸を通すようなナローパスだが、残された時間は少なく、改革は待ったなしだ。
(大崎明子 =週刊東洋経済2010年3月13日号)
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