男性フリーアナが「MC以外」で活躍できない理由 一方、「局アナ道」を体現する安住紳一郎の凄み

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

またビートたけしとの名コンビもおなじみの報道・情報番組『新・情報7DAYS ニュースキャスター』では、安住紳一郎はメインキャスターである。しかしそこでの彼は、ジャーナリストではなく司会者という立ち位置を決して崩さない。それは、局アナという職業への誇りの表れでもある。同じTBSの大先輩でもある久米宏もまた、かつてメインキャスターを務めた報道番組『ニュースステーション』(テレビ朝日系)において「私はあくまで司会者でいたい」と言っていた。著書のなかで安住紳一郎もその言葉を引いて、「この一言で、多くの局アナが救われた」とつづっている(安住紳一郎『局アナ 安住紳一郎』)。

局アナの完成形とは?

ラジオでの安住紳一郎の魅力も忘れるわけにはいかないだろう。このあたりは、テレビとラジオの両方を持つTBSの局アナの持つ強みでもある。ラジオの冠番組『安住紳一郎の日曜天国』を聞いていると、テレビではなかなか気づかないが、実は彼がかなり強烈かつ面白いキャラクターの持ち主であることがわかる。

一言で言えば、安住紳一郎は筋金入りのオタク気質だ。例えば、トラブルによる埼京線の遅延情報が入ってくる。ラジオの生ワイド番組ではよくある場面だ。ところが、安住アナの場合は、それをきっかけに埼京線や電車についてのうんちくがとめどもなくあふれ出して止まらなくなる、といった具合だ。

そして鉄道などだけでなく、彼は恩師である齋藤孝との共著『話すチカラ』でも語っているように「国語科マニア」を自認し、教員免許も取得している。またテレビが大好きな相当の「テレビオタク」でもある。つまり、言葉とメディアに携わる職業であるアナウンサーに直結する趣味を持つオタクでもあるのだ。そのことは、安住紳一郎というアナウンサーが“局アナ道”を真剣に極めようとする支えにもなっている。

こうした多様な顔を持ち、見れば見るほど、聞けば聞くほど飽きない安住紳一郎というアナウンサー。彼が最終的に目指す局アナの完成形とはどのようなものになるのだろうか? 興味が尽きないとともに、そこにきっと男性アナウンサーの未来もあるはずだ。

太田 省一 社会学者、文筆家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

おおた しょういち / Shoichi Ota

東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。現在は社会学およびメディア論の視点からテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、音楽番組、ドラマなどについて執筆活動を続ける。

著書に『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)、『「笑っていいとも!」とその時代』(集英社新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『水谷豊論』『平成テレビジョン・スタディーズ』(いずれも青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)など。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事