男性フリーアナが「MC以外」で活躍できない理由 一方、「局アナ道」を体現する安住紳一郎の凄み

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例えば、『羽鳥慎一モーニングショー』と同じ時間帯で放送されている朝の情報番組・ワイドショーのMCを見ても、博多華丸・大吉(NHK)、加藤浩次(日本テレビ)、立川志らく(TBS)、少し時間帯はずれるが設楽統(フジテレビ)と圧倒的に芸人MCが強い。しかも芸人は、番組を仕切る進行役だけでなく、必要なときは自分から笑いを取りに行くこともできる。男性フリーアナは、そうした引き出しの豊富なお笑い芸人に戦いを挑まなければならない。その結果、主戦場のMC業で成功する男性フリーアナウンサーの数が限られ、それ以外のところに活動の場を広げていくことも簡単ではなくなってしまう。

安住紳一郎が極める“局アナ道”

とすれば、キャラクター化によって個性をアピールしつつも、基本に戻って「局アナ」という職業を極めることもひとつの有力な選択肢になるだろう。

実際、『news every.』のメインキャスターを務める日本テレビ・藤井貴彦のように、いま局アナが話題を集める流れもある。コロナ禍のなか、藤井アナは「2週間後の未来を変えられるように今日もご協力をお願いします。命より大切な食事会やパーティーはありません」といった新型コロナ感染拡大防止に向けた真摯なメッセージを連日番組のなかで発し、視聴者の共感を呼んだ。

以前から彼は「かまない」ことでも有名だが、正確な原稿読みや番組進行は大前提として、こうした私的メッセージを発することも時と場所を心得たものであれば歓迎される。その意味では、局アナはフリーアナよりも必ずしも不自由なわけではない。むしろ局アナであったほうが、オールマイティーに多彩な分野の仕事ができるメリットさえある。

そしてなかでもそのアドバンテージを最大限に生かしていると思えるのが、TBS・安住紳一郎だ。彼は2006年の「好きなアナウンサーランキング」開始以来5年連続でトップを独走し、早々に「殿堂入り」した伝説を持つ。当然のごとく、入社以来スポーツ、バラエティー、音楽、情報・報道など数多くのジャンルの仕事をこなしてきている。また時には、木村拓哉主演のドラマ『GOOD LUCK!!』(2003年放送)のように、俳優として出演することまである。

ただそうしたなかにも、安住紳一郎の場合、どんな番組に出演しているときも“局アナ道”とも言うべき局アナのあるべき像が確固として本人のなかにあるように見える。例えば、『ぴったんこカン・カン』ではどんなシチュエーションのロケのときでもちゃんとスーツにネクタイ姿というのも、そう思わせる。ささいなことのようだが、そういう見た目の面にも自分の立ち位置を守ろうとする固い意志が感じられる。

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