高校生が「制服を着崩さなくなった」本当の理由 大学入試制度改革が優等生目指す志向を導いた
管理されることに抵抗がなく、学校の指示には従う、かわいい制服が大好きで、着崩しは「ださい」という見方はそれなりに合理性がある。
ここで注目したいのは、4の学校推薦型選抜入試(推薦入試)、総合型選抜(AO入試)対策との因果関係である(以下、「学校推薦型+総合型」)。
年々減る大学の一般試験入学者
最近、学校推薦型+総合型の入試入学者の比率が高まっている。2000年、33.1%、08年、43.4%、17年、44.3%だ。大学別で2007年と2017年を比べると、早稲田大は33.9%から、39.5%、慶應義塾大は14.9%から18.7%に増えている。青山学院大、学習院大、上智大、立教大は4割を超えている。
これは国の政策が反映されている。文科省のことばを借りるならば、「入学者選抜において受験生の資質や能力などを多面的、総合的に評価する」ことが推し進められた。そのために、主に学力試験などによる一般入試主体から、「調査書や多様な能力、適性、意欲など」をていねいに評価するという「学校推薦型+総合型」に舵を切りつつあった。
これが制服の着こなし方に影響を与えている。
「学校推薦型+総合型」による入試に受かるためには、「多面的、総合的な評価」に耐えうるため、高校生活をまじめに送らなければならない。学校から推薦してもらえるようにいつも校則をちゃんと守る、もちろん、制服はきちんと着こなしミニスカートなど変形はもってのほかだと、生徒は考えるようになった。
教師からそう指導されたわけではない。大学に入る近道は優等生になること。そのために生徒が積極的に管理されるようになった、と言える。大学進学率(4年制)が高まり、これまでに大学に進まなかった層が大学で学ぶという背景もあった。大学進学率の推移は、1990年、24.5%、2000年、39.7%、2010年、50.9%、2019年、54.6%となっている。
これらをすこし整理してみよう。
社会構造が変化するなか、大学進学率が高まった。一方で少子化が進み、大学は優秀な生徒を確実に受け入れたい。そのためには一般入試ではなく「学校推薦型+総合型」が効果的であり、実際のこの入試方式が早慶MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)、関関同立など大規模大学で増えた。
「学校推薦型+総合型」に受かるためには校則を守らなければならず、制服はきちんと着こなし変形させてはいけない│これが入試制度の変化が制服の着こなし方に与えた影響である。街にヴィジュアル的な不良、非行少年少女を見かけなくなった1つの要因でもあろう。
制服の思想に大学入試が入りこんでしまったわけだ。
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