ロボット義足、MITイノベーターの夢 「グローバル人材」たちの苦労と葛藤(3)

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 夢を持つこと。そしてそのために努力を重ねること

そして僕には、宇宙開発の歴史に残る仕事をしたいという夢があった。その夢を追ってMITに留学し、NASAジェット推進研究所(JPL)に入った。グローバルがどうこうだなんてどうでも よかった。ただ自分の夢を実現することだけが僕の関心事だった。そして僕なりに努力を重ね、いくつかの幸運と多くの人からの恩を受けて、何とかここまでたどり着いた。

夢を持つこと。そしてそのために努力を重ねること。

これを若い人たちに伝えることこそが、そしてそれだけが、僕が著書を上梓した理由だ。だから、MITやNASAを目指す人たちだけを対象に書いたものでは決してない。むしろ、グローバルなどという浮ついた言葉が流行る時代だからこそ、日本で地道に勉強を頑張る学生や、夜遅くまで残業し仕事に没頭する会社員たちを励ましたかった。あなたたちは「グローバル人材」と比べて劣っているわけでは決してない。夢の価値に優劣などない。それを持ち、追いかけることこそが価値なのだ、と。

僕の本には残念ながら「成功へのレシピ」は何ひとつ書かれていない。これを読めばMITに合格する必勝法が得られるわけでもない。そもそもそんなものは存在しないのだから書きようがないし、あたかもそれらが存在するかのように読者を騙すことも、僕には絶対にできない。

書かれているのは、僕がMITで苦労し、失敗し、恥をかき、道に悩み、それでも夢が僕に取り憑いて離れず、不器用に努力を重ねた、その体験談と、そこから学んだ幾ばくかの知見だ。

その話を通じて、若者たちがグローバル人材ブームなどに踊らされず、それぞれの夢を持ち、日々の勉強や仕事をコツコツと頑張るモチベーションを与えることに、ほんの少しでも貢献できればいい。そう僕は思っている。

MITの卒業式にて。左から、著者、遠藤さん、橋本さんと、S君。S君は現在シアトルのボーイング社に勤務するエンジニアで、尊敬する友人のひとりなのだが、僕と専門が近いため、本シリーズでは割愛した

 

新刊はこちら→『宇宙を目指して海を渡る MITで得た学び、NASA転職を決めた理由』 (Kindle版はこちら

【著者講演会のお知らせ】
作家さんとの集い 「小野雅裕さんを囲む会&サイン会」 (※有料)
  日時:2014年5月30日(金)19:00~ @隆祥館書店(大阪市中央区)

小野雅裕『宇宙を目指して海を渡る』 講演&サイン会
  日時:2014年5月29日(木)18:00~
 @慶應義塾大学矢上キャンパス創想館2F セミナールーム1

大阪生まれの文学少年で、自身でも小説を執筆し、大阪文学振興会より「織田作之助賞・青春賞」を受賞したこともある異色の経歴。米国トップ校留学のリアル、宇宙開発こぼれ話、30年間、目を開けて見続けた夢の軌跡とそこから学んだ生き方を、「理系」らしからぬ情熱的な言葉で語ります。

 

 

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