「70歳定年」で30~40代の昇進が絶望的な理由 年功序列の「日本株式会社」は変われないのか

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だから、せいぜい200人、300人ぐらいまでの外資系企業に入ったほうがよい、と筆者は考える。外国人と一緒に仕事をしてこそ、英語力も身につけられ、彼らのグローバルで合理的な仕事のやり方を学んでいくことができるのだ。こうした経験をしてこそ、自分の実力、市場価値を高めていくことができる。

外資系のデメリットは、能力主義の人事だから、パフォーマンスが悪ければ解雇される、戦略の転換が早いので、自らの居場所がなくなってしまうというケースが多いことだ。ただ、外資系の世界に入れば、若い時から大きな責任を与えられるから実力と経験が身につく。そのため転職は比較的容易であるから、外資系に行くのをそれほど恐れることはない。

外資系の一番の問題は、50歳ごろまでは転職でキャリアをつないでいくことができても、60歳近くになると、それが相当難しくなることである。この頃までに、自分の得意分野を見つけ、人脈を築き、独立の準備をしておかないと、そこから70歳までのキャリアが描けない。

というわけで、外資系に行って頑張ったとしても、70歳定年制時代では、結局どこかで「独立起業」の選択肢を取り、自分の力で独立するか、起業するかしていかなければいけなくなる。

しかし独立起業は、日本社会では難しい。日本では、何か新しいことを始めようとすれば、政府による規制にぶち当たることがある。

さらに、運よく新製品、新サービスの販売にこぎつけられたとしても、今度は顧客になってくれる日本の個人と会社の異常なまでに慎重で時間のかかる購買プロセスに苦しめられる。これを辛抱強く打開する覚悟が求められる。

もっとも独立起業は、新規商品、サービスの開発ばかりではない。既存の事業を展開することもできる。こうした分野では、規制や慎重な購買プロセスが邪魔になることはない。

「70歳定年制時代」を生き残るために

その人独自の差別化のポイントを作り、人脈を使ってうまくビジネス展開できれば、成功を勝ち取ることができる。人口減少社会になって、市場が縮小してくるとはいっても、いまだに1億2000万人の人口を抱えているのだから、どこにでもチャンスは転がっている。

ただし、そこで勝ち残っていくためには、何らかの差別化が必須である。そのために、会社勤めをしている間に、自分独自の技術、サービス、人脈を獲得し、特定の分野では、誰にも負けないというものを身につけ、独立起業の準備をしておく必要がある。

こうして見てくるとわかるように、70歳定年制時代に「日本株式会社」を離れ自分独自のキャリアを形成していくことは簡単ではない。3つの選択肢を提示したが、最後は独立起業の選択肢にたどりつくので、とにかく自分の差別化のポイントを作りあげていくことが大事である。

植田 統 国際経営コンサルタント、弁護士、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授

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うえだ おさむ / Osamu Ueda

1957年東京都生まれ。東京大学法学部を卒後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。ダートマス大学エイモスタックスクールにてMBA取得。その後、外資系コンサルティング会社ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(現PWCストラテジー)を経て、外資系データベース会社レクシスネクシス・ジャパン代表取締役社長。そのかたわら大学ロースクール夜間コースに通い司法試験合格。外資系企業再生コンサルティング会社アリックスパートナーズでJAL、ライブドアの再生に携わる。2010年弁護士開業。14年に独立し、青山東京法律事務所を開設。 近著は『2040年 「仕事とキャリア」年表』(三笠書房)。

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