「70歳定年」で30~40代の昇進が絶望的な理由 年功序列の「日本株式会社」は変われないのか

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65歳定年制になると、「日本株式会社」がどう変わってくるのか。最近、日立製作所のようにジョブ型雇用を導入する会社が出てきたので、それが幅広く報道がなされるようになり、年功序列制度が薄れてきたように錯覚している人もいるのではないか。

しかし大多数の会社では、今まで通りの新卒一括採用、年功序列制度、終身雇用、定年制を採用しているのが実態だ。そもそも、政府が高年齢者雇用安定法とその改正案を作る段階で、定年制を前提としたものを作っていること自体が、年齢による処遇を前提としているのである。

結局、定年が65歳に延長されれば、会社は社員の昇進を遅らせることで対応しようとする。メリットを受けるのは、2025年4月以降に60歳とか、役職定年のある会社なら55歳になってくる人々だ。

つまり、1965年4月1日以降に生まれた人たちか、1970年4月1日以降に生まれた人たちである。彼らは、60歳で定年または55歳で役職定年を迎えると思っていたのに、それが突然5年延長される。給与をもらう時期が5年延長されることになり、生涯所得もかなり増える。

「日本株式会社」の人事制度は変わるのか

しかし彼らよりも5年、10年後に生まれた人たちにとっては、迷惑でしかない。上が役職にとどまるのだから、自分たちの昇進が遅れる。給与も上がらない。人生設計が狂ってくる。

もちろん多くの会社で激変緩和措置を取るだろうから、2025年4月1日から、いきなり昇進が5年延びることにはならないと思うが、2030年から2035年頃にかけて徐々に昇進が遅くなってくるのは必然である。

その影響は、部長レベルだけでなく、次長レベル、課長レベル、課長代理レベルにも及んでいく。最初に述べたように、部長への昇進年齢が50歳から55歳になるなら、単純計算で課長は40歳から45歳に、課長代理は30歳から35歳になっていく。大卒後10年以上待たないと、課長代理にすらなれない状況になる可能性がある。

こんな事態になってしまうと、若手ビジネスパーソンのモチベーションが奪われる。会社の上層部の中には、年功序列制度をやめ、能力主義にしようという議論が起きてくるだろう。だが、それが多数意見になり、本当に能力主義が実行されるのか。

おそらく、そんなことにはならないだろう。なぜなら、人事制度の変更を行うとなれば、それを決めるのは人事部長、取締役会、社長だが、彼らは「日本株式会社」の中での最長老であり、30年、40年かけてひとつひとつ階段を上り、今の地位を獲得してきた人たちである。

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