起業家教育のプロが伝授する「思考と実践術」 誰でもすぐに応用できる「起業の3大原則」とは
ベンチャーカフェでの活動と並行して、CIC開業の準備を進めました。そこで僕がやったことは、まさにバブソン大学で教えている「起業3大原則」の実践です。
まず行動ありき、次に失敗ありき、そして人を巻き込む。CICは日本初進出でしたが、外からやってきたからこそ、失敗しても許される面がある。それを最大限利用して、常識を破る、やっちゃいけないと言われていることをどんどんやっていこうと思いました。
起業ではこうすればすべてうまくいくといった魔法の一手はありません。大事なことは失敗から学ぶことです。私は投資利益率=ROI(Return On Investment)ならぬROL(Return On Learning)と名付けていますが、ROLを高めることこそ、最も大事なことです。
集まることが難しい今こそ、価値が高まる
「人を巻き込む」という点では、何より人を大事にしました。まず価値観を共有できるコアメンバーを決めて、彼らが動きやすい環境を整えました。そしてベンチャーカフェの登壇者や参加者で「この人は」と思う人に声をかけたりして、少しずつ社員が増えていきました。社員が増えていけば摩擦も増えますが、その度に合宿をして、徹底的に議論しました。意思決定のプロセスは完全にボトムアップです。その中でWe are ONEというカルチャーが醸成されたと感じます。
――開業準備中に新型コロナが世界中で蔓延しました。
CICは世界11都市に19拠点を展開していますが、コロナ禍でも落ち込みが比較的小さかった。「WeWork」を展開するウィーカンパニーが沈む中で、われわれはむしろ浮上したんです。それは、CICが単なるシェアオフィスではなく、イノベーションの集積地として評価されてきたからだと思っています。
コロナ禍で集まることが難しい今こそ、CICの価値が高まる。テレワークで効率化できる業務はたくさんありますが、一方で人が集まって、多様な価値観がぶつかり合ってこそ創造的な仕事ができる。そうした本気で仕事をクリエイトしたいと思う人たちに、CICを使ってもらいたい。
開業に際しては、ある程度そろったら早めに開業しようという議論もあったんですが、家具など細部にまでこだわって、満を持して開業しました。商習慣の違いもあり、パートナーの森ビルさんとは途中衝突もありましたが、森ビルさんの熱意があったからこそ開業にこぎ着けられました。
――開業までのプロセスは、ベンチャー企業そのものですね。
自分でも大学で教えていることを実践したいという思いがありました。バブソン大学は学生の目も厳しいです。「あの先生は本を読めばわかることばかり言っている」とか。学生たちが求めているのは生の情報であり、現実に基づいた議論です。起業家教育の分野は、理論だけでなく、実践が重要です。僕も理論を自ら実践し、証明したかった。
起業道というのは、本当に誰にでもできることです。不確実な時代、むしろ行動しないことがリスク。みなさんにも、まずは一歩踏み出し、それをとことん楽しんでもらいたいですね。
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