この夏はキャンピングカーも人気でした。自動車で移動するので旅行の自由度が増すうえ、宿などの事前予約がいらないので予定をギリギリで決めたり、変更できたりする気軽さもあるからです。
近年、フランスでは「グリーンツーリズム」に注目が集まっていますが、キャピングカーであれば移動中に景色を満喫することもできますし、キャンプ場や海辺など、禁止されていないところならば、自然の「中」に駐車して滞在することができます。
実際、今年のキャンピングカーのレンタル数は昨年の夏に比べて60%増えました。初めての人は2、3週間レンタルするパターンが多いですが、どこにでもいける「第2の家」として購入を検討する人も増えているようです。
コロナで芽生えた「暮らしの美学」
この特別な夏のバカンスを通じて、フランス人が改めて発見したことが2つあります。1つは誰もがリラクゼーションを求めていたということ、そしてもう1つは「今を楽しみたい」「何もしないこと(farniente)を楽しみたい」ということです。
それは前述のとおり、ゆっくりしたペースで観光スポットなどを訪れ、1日をアクティビティーでいっぱいにしないという旅の仕方です(どのみちいまは、有名観光スポットに行くには事前予約が必要です)。そして、これは非常にフランス人らしいと言えるのですが、こうした柔軟な旅の仕方が「暮らしの美学(art de vivre )」となりました。
見通しがつかない状況が続くなかで、観光関連業界もこの新たな美学に柔軟な姿勢を見せています。いまでは、列車の乗車券や航空券は変更や払い戻しが以前よりできるようになりました。ホテルはキャンセルポリシーを、レストランはテーブルセッティングの見直しを迫られています。
フランス人の旅行先や旅行の仕方が変わるなかで、旅行代理店からホテル、ベッド&ブレックファストから地方都市、有名観光スポットなど多くがより多くの人を惹きつけるようなホームページに作り変えました。興味深いことに、これは個々でやっているように見えて、実はそれぞれがその土地でどこを訪れるべきかなどアイデアを出し合っており、それぞれを「助け合う」形になっているのです。
フランス経済にとって重要である旅行業界を支援しようという思いは政府も同じです。フランス政府は12月末までこの産業の「部分的失業(chômage partiel )」について、一時的に解雇されているスタッフの給与を支払うという形でサポートすることを決めています。
フランス人が特別な夏を通じて新たな旅先や旅行の仕方を見つけた背後には、この産業の未来を支えたいという意思もあります。これによって旅行産業は希望を取り戻しつつありますが、それでも外国人観光客の不在をいつまで埋めることができるのでしょうか。
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