一方、フランス人の一部は、「非ヨーロッパ人観光客」がいないという、またとない時期を利用して、フランス以外のヨーロッパ諸国を旅行することを選びました。9歳と7歳の2人の子どもを持つ建築家のベルトランはイタリアを旅行しました。誰もいないヴェネツィアのサンマルコ広場を楽しみ、わずか150ユーロでプレジデンシャルスイートに泊まったと言います。
パトリックと妻はイタリア好きで、イタリア中を旅行し、これまで想像もできなかったような形でローマを堪能したといいます。サンピエトロ寺院にはほぼ誰もおらず、システィーナ礼拝堂の絵画を眺めるのは天国のようだったと言います。そして、どこにいっても最上の形で歓迎を受けたそうです。より大胆な人たちはギリシャ、とくにギリシャの島に向かい、新型コロナのストレスをまったく感じずに過ごしたと言います。
スイスもまたフランス人にとって人気の近距離の旅行先の1つでした。ピエールとエレーヌはローザンヌに2週間滞在し、山や文化、スイスの清らかな環境を楽しみました。マスク着用の義務はありませんでしたが、レストランを利用する際には追跡が必要になったときのために備えて電話番号と名前を申し出る必要があったと言います。
フランス人が見つけた「新たな旅の仕方」
今回の「特別な夏」で実は、フランス人は新たな旅先を発見しただけでなく、新しい旅の仕方も見つけました。もっとゆっくり、もっと近距離で、より本格的で、自然に近いもののよさを見つけたのです。
あなたがワインに詳しいなら、こうした考えが理解できるかもしれません。フランスでは、地方の特性にリンクしたテロワール(terroir)というコンセプトがあり、それは気候や習慣、歴史、信頼性……そしてもちろん、地元産の製品や食品、産業とつながっています。
例えば自転車で、とくにロワール川やアルザス地方のワインヤードを巡るという旅行。実際、「サイクリングツーリズム(cyclotourisme)」はいま、非常に人気があります。
自転車人気の背景には、昨年12月から今年1月まで続いた交通機関のストライキで通勤などに新たな移動手段が必要になったこともあります(「『長期間スト』にフランス人が怒らない根本理由」)が、この夏はこの動きが一段と加速しました。なかには、日帰りだけでなく、1週間まるごとの本格的なサイクリング旅行をした、という人も。
サイクリングは言わずもがな、いい運動になるほか、環境にも優しいですし(ecoloと言います)、ソーシャル・ディスタンシングを守ることもできます。
近年、電動アシスト自転車が普及していることで、丘や山にも登ることができるようになりました。
こうしたなか、今年は海外旅行に行けない人々が、「フランスにとどまるんだったら、何か新しいことを始めよう」と決意したいのです。旅行代理店は、自転車レンタルや、旅行中の荷物の移動、ホテルの事前予約など、オールインクルーシブな新たなパック旅行を提案するようになりました。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら