臨月にコロナ感染した彼女の壮絶な出産体験記 まさかの事態に病院は特別態勢を組み対応した

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感染経路は、家庭内感染が57%で最多だった。まさにMさんのような、夫が必死に謝ったケースが多かったということだろう。

厚生労働省は、コロナ禍の中で妊娠期を送る女性の支援策としてテレワークや休業を推進しているが、妊婦たちからは、自分だけではなく、夫も出勤しないでほしいという声が高い。その心配は、的を射ていたということになる。

しかし、医療者をはじめテレワークができない仕事は多く、家庭内感染を防ぐことは現実的にはとても難しい。

妊娠後期はとくに慎重な行動が必要

筆者が調査会社ニンプスと実施した調査では、出勤している夫との接触を減らすために別居をしているという女性や、食事は別にとるという女性もいたが寂しそうな様子だった。妊娠中は夫婦の触れ合いを大切にしたい時期でもあり、Mさんのように「もっと会話があればお互いの体調が把握できた」と反省している人もいる。

関沢教授は、夫に感染の可能性が高まったとき、速やかに妊婦を守れる仕組み作りを提案する。

「私たちは調査からの提言として『自宅に感染者、濃厚接触者が出た場合は、妊婦が安全に隔離される体制が必要』と書きました。例えば、無症状、軽症の感染者でも家庭に妊婦がいる場合は自宅待機とせず、優先的にホテルなどへ移れるとよいのではないでしょうか」

とくに慎重に行動してほしいのは、妊娠後期だ。妊娠後期は感染中に分娩となる可能性があるうえに、重症化しやすいことがわかってきた。今回の日本産婦人科医会の調査でも、酸素投与が必要になったケースが、全体では17%だったが、妊娠後半・産後では37%と2倍以上に増えた。

「未知の病」も、感染拡大が始まったころに比べるとずいぶんいろいろなことがわかってきた。これからは、わかったことを素早く生かす柔軟さがますます大切になるだろう。

河合 蘭 出産ジャーナリスト

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かわい らん / Ran Kawai

出産ジャーナリスト。1959年東京都生まれ。カメラマンとして活動後、1986年より出産に関する執筆活動を開始。東京医科歯科大学、聖路加国際大学大学院等の非常勤講師も務める。著書に『未妊―「産む」と決められない』(NHK出版)、『卵子老化の真実』(文春新書)など多数。2016年『出生前診断』(朝日新書)で科学ジャーナリスト賞受賞。

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