日立物流が迫られる「成長戦略」の練り直し SGホールディングスとの経営統合検討は見送り

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これまでも、両社の協業の具体的な上乗せ効果をアピールするのは日立物流で、経営統合に対しては両社の温度差も見受けられた。

例えば昨年5月、決算説明会で中谷社長が「経営統合に向かって進んでいるという認識」と発言。それを受けて「SGHDとの経営統合『前進』」と報じられると、日立物流は、「経営統合に関し、協議の開始も含めて決定した事実はない」とリリースを出して火消しに動いた。SGHDは一貫して「経営統合ありきではない」(幹部)という姿勢だった。

筆頭株主である日立製作所の意向は?

もともと、日立物流がSGHDと手を組んだ背景には、日立製作所が選択と集中の一環で低採算の事業会社を連結子会社から外したことがある。

保有比率が低下したとはいえ、現在も日立製作所が日立物流の筆頭株主(30%保有)だ。「(物流が)非主力事業ならば、残りの保有分も売却して再投資するのがベスト」との見方もある。だが、SGHDとの提携が発表された2016年以降も株式を持ったままでいるため、「(日立製作所は)日立物流に対する関心がなく、半ば“忘れられた存在”になっている」(業界関係者)とも言われる。

親の日立製作所にはもう頼れず、有力なパートナーになるはずだったSGHDとの経営統合に向けた検討は棚上げ。日立物流の成長戦略は練り直しが不可避だろう。

佃 陸生 東洋経済 記者

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つくだ りくお / Rikuo Tsukuda

不動産業界担当。オフィスビル、マンションなどの住宅、商業施設、物流施設などを取材。REIT、再開発、CRE、データセンターにも関心。慶応義塾大学大学院法学研究科(政治学専攻)修了。2019年東洋経済新報社入社。過去に物流業界などを担当。

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