日立物流が迫られる「成長戦略」の練り直し

SGホールディングスとの経営統合検討は見送り

当初、両社は提携によって、「デリバリーとロジスティクス(3PL)の融合」を進めるとしていた。日立物流にとって、全国配送網を持ち、国内宅配便市場のシェア約3割を占めるSGHDは、EC向け物流などBtoC領域を拡大するうえで重要だった。一方、SGHDにとって売上げの1割に満たない3PLの強化は長年の課題。相互補完によるシナジーが期待されていた。

輸送共同化や営業協力によって、日立物流は2020年3月期に売上高200億円、営業利益20億円規模の協業効果があったとしている。だが、その成果のほとんどは国内。日立物流の中谷康夫社長は昨年、「国内で成果は上がっているものの、海外では想定したほどの効果は出せていない」と提携の課題を述べていた。

日立物流は、人口減少による企業間物流の縮小を懸念し、海外事業を拡大。「海外投資は最優先課題」(中谷社長)としてきた。国内の競合他社も海外ネットワークの強化に余念がない。日立物流としてはSGHDと共同で海外事業の拡大に向けた投資拡大をしたいとの意向があった。

SGは国内事業の拡大を推進

だが、EC需要の拡大で国内宅配便市場が拡大し続けており、SGHDの主眼はあくまで国内事業の強化にある。昨年からは、路線トラック大手のセイノーホールディングスと連携し、幹線輸送を共同化するなどの効率化を進めている。今年1月末には約840億円を投じた大規模物流センター(東京・江東区)が竣工した。荷物の処理能力を高めることで取扱個数をさらに拡大する狙いだ。

業務提携を海外に広げたい日立物流と、国内事業の強化に邁進するSGHD。コロナ禍だけでなく、お互いの注力領域のズレが、資本業務提携の見直しの一因ともいえるだろう。

両社は「これまでの関係は変わらず、引き続き業務面で提携していく」としている。資本関係として残るのは、SGHDによる日立物流の株式15%保有のみ。これについてSGHDは「何か意図があったわけでもなく、結果として(15.2%の日立物流の)株式が残った」(広報担当者)とそっけない。一方、日立物流の広報担当者は「従来通りの提携関係を継続するためにも、SGHDには当社株式を保有してほしかった」と説明する。

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