リストラ部門の社員を活かせない日本企業
そんな雇用のミスマッチ。問題は、「社内」にも存在します。
従業員は十分にいるはずなのに、人手不足状態の部署が存在する、逆に仕事がない「社内失業」状態であるなど、同じ会社内で業務量に大きな違いが出てしまっている状態がよく見受けられます。たとえば、取材した自動車部品製造業では事業撤退・海外移転で工場に勤務していた人材が余剰状態です。一方で、新規事業の住宅建材事業では設計・建築部門の人材が不足して残業しなければ終わらない状態。リストラはしない経営陣の方針を社内は指示しているものの、
「設計・建築部門は人手不足で社員が倒れてしまうかもしれません」
と忙しい部署では不満がたまり始めました。ただ、製造部門の人材を異動させても、戦力になるのは難しいものがあります。こうした、ミスマッチに対して、どのように対処したらいいのでしょうか?
もうひとつケースを紹介いたします。その会社は創業50年以上になる出版社。ただ、出版不況もあって、主力事業をデジタルメディアへ転換する経営判断がなされました。その関係で雑誌の廃刊がいくつか決まり、廃刊になった部署の社員たちはデジタルメディアの関係部署に異動させる方向で人事も考えていました。ところが、雑誌編集一筋で仕事してきた古参社員たちが、
「歴史ある出版事業を早々に縮小させるのはいかがなものか?」
と創業オーナーに直訴。これにオーナーも賛同してしまったから、さあ大変。人事部としてはデジタルメディア事業へ人材異動をするアテが外れてしまうことになりました。
そこで、人事はどうしたか。新規事業開発の部署を新設し、デジタル書籍とこれまで発行してきた媒体との融合を考える仕事を「あえて」つくり、そこで古参社員の一部を吸収することになりました。結果として
・デジタルメディアでは新たな人材を採用をせざるえない状態
・収益を生まない部署の新設に対して、不満の声が増えた
と、よくない状況を招いてしまいました。特定の社員の不満を抑えるために、大きなマイナスの影響が生じたのは明らかです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら